「なぁ」

「何」

「俺、お前のこと好きだぜ?」

「ありがとう」

「・・ヒデェ」



立海大附属中学校校舎内、俺のクラス。時間は昼休み。
自分の席に後ろを向きながら、俺の後ろの席のに話しかける。



「なぁなぁ、何がいけねェわけ?」

「・・・・オーラ?」

「間と疑問系ってことは、絶対それってわけじゃねェんだな」

「認めたくないか」

「オーラなんてどうこう出来るもんじゃねェだろ」

「出来ることには出来るんじゃない?」



告白したのは1ヶ月前。
告白する前からとは仲良かったし、自分でも自信があった。
だけど、返された返事は『考えさせて』。
一応、望みはあるから辛抱強くアピールしてきたけど、もう1ヶ月経ってる。
そろそろ真面目に考えて欲しい・・・。



「ブン太が真田みたいなオーラ出せるようになったら付き合ってもいいよ」

「無理むりムリ、ありえねェだろ」

「・・・ブン太。ずっと待つんじゃなかった?」

「お前、真面目に答えてくれねェし」

「告白されてからも、毎日好き好き言われたらねぇ」

「・・・ウゼェってこと?」

「勉強しなさい」

「・・・・おう」



しょうがねェじゃん。気づいたら言ってんだからよ。
もう・・・なんつーか・・・・・ずっと好きすぎてどうしていいかわかんねェんだよ。
なのに、最近は相手にすらしてくれない。こうゆう話題出さなきゃ、普通なんだけどなぁ・・・。



「よっし。今度デートしようぜィ。俺の良いトコ見せてやる」

「部活、休みの日ないじゃない」

「・・・・・・・なんとか幸村に言ってくれよ」

「許可が下りるわけない」

「うぅ・・・」

「真田に言おっか?『ブン太が休みたがってた』って」

「お願いします。それだけはやめてください」

「わかってんじゃない」



だからってよォ・・・・真田にチクるとかヒドくね?
部活を休みたいわけじゃなくて、との時間が欲しいんだよ・・・。

しょぼくれての机の上に頭を乗せ、どこってわけじゃないが視線を隅にやった。
と、上から聞こえる天の声。



「・・・・勉強も部活も頑張ったら、放課後デートくらい良いわよ」

ガバッ

「・・・・・本当か?」



聞き取った瞬間、頭を上げて『真か?』と言うようにを見つめた。(真田意識してみた)



「ちゃんとやるなら」

「マジで?嘘なし?やっぱ止めたは受け付けねェからな?」

「本当だってば」

「いよっしゃーーーッ!!!」

「(さっきのしょぼくれた顔の面影はドコに・・・)」



たったそんなんでデート出来んなら、お安いもんだ!!
『頑張ればいい=良い結果でなくてもいい』んだよな!
・・俺ってやっぱ天才。



「俺は頑張るぜ!!」

「はいはい」






2週間後


「・・・・・・・・」

「頑張った。俺は頑張ったぞ」

「まぁ、確かに順位は少し上がってるけど・・・」

「だろ?部活だってちゃんとやってただろ?」

「確かに持久力とかも全体的に良くなってるけど・・・」

「・・・・・・ダメか?」



は昨日やった英語ミニテストの結果用紙とテニス部の記録ファイルを見ている。
2週間真面目にやってきた。一瞬たりとも余裕はなかった。
だけど、結果はそんな変わらず。2週間でそんな変われるハズないけど・・。



「まぁ、ブン太の頑張りはずっと見てたけど・・・」

「おう。っつか、マネは見てなきゃダメだろ」

「・・良しとするか」

「よっっっっしゃーーーーーっ!!!!」

「煩い」



やったぜ俺!見事合格!
俺は大声と両手を上げて、自分を褒め称えた。
周りからの視線とか気にしない。みんな俺がを好きなことなんかとっくに知ってるから。
それに、中には『おめでとう』とか祝ってくれてる奴も居るし。



「今日!今日良いか?」

「いきなりだね」

「そりゃそうだ!」

「こうなること、わかってたよ」

「ってことは良いんだな!やったぜ!!」







*








「俺はついにやってやったぜーー!!」

「へぇー!凄いッスね!先輩とデートって!!」

「ピヨ。なんでブン太なんじゃ」

「仁王くん、君はブン太くんとは違います」

「よかったな。ブン太」



部活にきて、早々に皆に知らせる。
言った瞬間、みんなはかなり驚いて「嘘だろ?」とか色々言ってたけど
本当と言い続けたら、なんだかんだ言いつつ祝ってくれた。

ガラッ



「皆、何してんの」

「おう、!」

「早くしないと、幸村に殺されるよ」

「そうだな!行こうぜィ!あ、それと今日のデートさ…」

「「「「・・・・・・・」」」」



ラブラブなオーラ飛ばしながらとコートへ行く。
それを見せ付けられた本人たちは、見事に全員目を見開かせてる。(お前らまだ信じてなかったのか)



「さっき皆と何話してたの?」

「へ?」

「大方、予想つくけど」

「おうっ!」

「返事になってない」

「見事にみんな信じなかったぜ!」

「そんな珍しいかな・・・」

「ホントだよな。まだデートってだけなのに」

「・・・・・・・」

「本番はこれからだっつの!驚くべきとこは、付き合ってからだろ!」

「・・・まぁ、ブン太とは前から遊んでるしねぇ」

「だろっ!」



・・・・・・・アレ?ブン太とはって俺だけ?
俺だけしか相手しねぇってこと?



「(マジかよ嬉しっ!俺だけ特別!?ちゃんとも考えてくれてんだなっ!)」

「(二ヤけてる二ヤけてる、花飛んでる)」

「(はぁ~vやっばっ!幸せすぎて死にそっ!!)」

「(口に手当てて・・・乙女か)」

「(絶対ェ、誰にも渡さねェ・・!は俺だけのもんだっ!)」

「(ブン太の方がよっぽど女らしいな・・・)」



がこんなこと思ってるなんて知らない俺。
そう。幸せすぎて気づかなかったんだ。
この現場を見られて、この後色々起こることを…







*








「まず皇帝に『たるんどる』?」

「・・・おう」

「データに尋問?」

「・・・・おう」

「詐欺師とワカメに妨害?」

「・・・・・おう」

「紳士に説教?」

「・・・・・・おう」

「魔王に罰ゲーム?」

「・・・・・・・おう」

「ハーフも道連れ?」

「・・・・・・・・おう」



のマネの仕事を手伝いながら、今日の部活のことを話してた。



「なんでここまでなるんだか・・・」

「仁王と赤也の妨害さえなければ、全然よかった」

「妨害って具体的に何されたの」

「・・・・・・・・・・・」

「言いなさい」



ちょ、マジですか。言ったらデートなしにされっかもしれないんだけど・・・。
とは言わせてさえもらえず、は『早く言え』とばかり睨んでくる。



「きょ、今日のデートでどこまで進むか・・・とか」

「例えば?」

「い゙っ!・・・『もう付き合うことになっちゃったりして』とか…」

「他は?」

「・・・・・『そのまま家に連れて帰りんしゃい』とか・・・」

「あの野郎共が・・・」

「(ビクッ)」



あまりのの恐さに手が震える。
持ってる紙束が机に当たって、カタカタ音がする。
これじゃあ、『恐い』っつってるようなもんだ。

それに気づいてか気づいてないか、はぁーっと溜息を吐く。



「ブン太もそんなんで動じないの!」

「いや、んなこと言ったってよ・・・。男ってそうゆう生きモンだし」

「今日の部活は不真面目だったってことで良いでしょうか」

「えぇぇ!!いや、俺はちゃんとやった!あいつ等が!」

「言い訳しない」



そ、そんな・・・・・。
机の上でがっくりうな垂れる俺。(『邪魔、退いて』とか酷ぇ・・)
だってよ・・・。あいつ等さえ、あんなこと言わなければ・・・。
つい調子に乗ってデレデレしちまっただけじゃねぇか・・隙見せちまっただけじゃねぇか・・・。
幸村に罰受けちまっただけじゃねぇか・・ジャッカル道連れにしただけじゃねぇかよ・・・。
それでも俺はのことだけ考えて、耐えたんだぞ・・?
こんなのってねぇよ・・・・。



「(最悪マジ最悪仁王最悪赤也最悪あいつ等覚えてろよ)」

「・・・デート。別になしって言ったわけじゃないじゃない」

「おう・・そうだな。確かに・・・・言ってないィィィ!!!」

「だから煩いって」



ガバッと起き上がる。机に両手を付いて、に詰め寄るように顔を近づける。



「マジで!デートしてくれんの!?」

「条件付なら」

「おう!良いぜ!なんだ、条件って!」



デート復活の件が嬉しくて、俺はなんでもやる気でいた。
だけど、の口から発せられた条件とは…



「ジローも一緒なら」



は?ジロー?
・・・・・ジロー?

なんでそこで男の名前が・・・っつか…



「“ジロー”ッテダレデスカ」

「とぼける気?」

「・・・もしや“あ”から始まって…」

「“わ”で終わる苗字の」

「・・・・“あ”“く”“た”“が”“わ”?」

「そう。“芥川慈郎”の“ジロー”」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「なんでぇぇぇぇ!!?」

「イヤなら、なしね」

「なっ、ちょ、はぁぁぁぁぁ!!?」



な、なんでよりによって芥川なんだ・・!
アイツ居たらデートどころじゃねェし!むしろデートじゃねぇし!
そう考えたら「クスッ」とたぶん見間違いじゃなかったら黒く笑った
やめて・・ホント嘘っつって・・。『冗談だよ』とか言ってくれぇぇ!
その思いも空しく「ジローじゃなきゃだめ」と小悪魔みたいに言われた。(くそっ可愛い・・!)

でも・・・俺としてもこの2週間を無駄にはしたくねぇ。
それに2人きりじゃなくてもと遊べるんだ。一緒に居れるんだ。
なら答えは一つだろう。



「わかった・・・」

「ジロー、OK取れたよ」

「電話してたのかよ(いっそ断れよ芥川)」



携帯を閉じたは俺の持ってた紙束を奪うとファイルに入れて棚にしまう。
他にも出してたペンとか消しゴムを片付けて、せっせと帰る準備をしてる。
いくら仕事とはいえの素っ気ない態度に、また気持ちが溢れだしてくる。



「好き」



また、気付いたら言ってる。
さすがのも、今言われたらそりゃびびる。



「いきなり・・どうしたの」

「にとって俺は友達?」



俺がそう言うと黙りこんだ。
いつもあーゆー態度だけど・・。ちゃんと考えてくれてんのかな。
その気持ちで一杯だったけど、今は考えてくれてる。
でもいくら経ってもなかなか返事をしない。
その様子を見た俺は今までの不安な気持ちはなくなって、余裕ができた。



「まだ・・いいけど。『ずっと待ってる』からよ」

「っ!」



そう言って俺はの頭にぽんっと手を乗せた。



「・・・もう…」

「え、何?」



がぼそっと言った声は聞こえなかった。
「決まってるけれどね」
「・・え?」
一言だけ言ってバッグを持って歩き始めた。



「待て、それどうゆう意味だ!」

「さァ」

「卑怯だぞ!」



俺も急いで歩き始めた。
の肩を掴んでこっちに無理に振り向かせたら



「まだ言ってやんない」



心なしか、ちょっと頬っぺを赤くさせてる。
それだけでも可愛いのに「べーっ」と舌を出して、俺から逃げるように走りだした。



「・・・不意打ちだろ」



その場に座り込んで目を手で覆う。
期待してしまう自分は人間だからしょうがないのか?

そのことでじっくり考えてたら5分は経ってて焦った。
幸村にの場所を訊いて追いついてから尋問しようとしても
「なんのこと?」とかとぼけるし、仕舞いには「ジローとデートする?」
とか言い始めたから、結局その日は諦めた。





You?me? (丸井くん、、お待たせ!)((チッもう来たか))(じゃあ行こっか)(うん!) (ってなんでお前が真中歩くんだよ!!) 2007.06.12...write 2008.02.23...up