たんぽぽが歌ってる。
ここは数日前まで緑一面だったのに、今はところどころ黄色が咲いてる。
ついこの間まで遠慮なく眠れたのに、花を潰して寝るのは気が引ける。
オレはたんぽぽがない場所を探してうまくよけて寝っ転がる。
(たんぽぽのいい香り〜。きもちE)
だんだん眠くなって、まぶたが完全閉じたとき、君はくるんだ。
「ジロー。起きてる?」
狙ったかのような絶妙なタイミングでいつもくる。
オレはそれに「ん〜…」と適当に返事だけして、また意識を飛ばそうとすると
は「部活戻ろうね〜。跡部怒るよ」とオレの腕を引っ張るから、また意識を取り戻す。
ゴロゴロいやいやとオレは駄々こねるけれど
ズルズルいくいくとはどんどんオレをひいてコートへ向かっていた。
「(・・・・あ!)」
「!たんぽぽ!」
「え・・?」
はハッと気づいて反射的なのかパッとオレを放し落とした。
「いた」「あ、ごめん」
オレはすぐ起き上がって、首のうしろをくすぐるものを見た。
(よかった・・・。たんぽぽじゃなかった)
頭で潰してたのはただの草で、黄色はなかった。
それでもは引きずって動いた身体はいくつかのたんぽぽを潰していた。
あぁ、ごめんねたんぽぽさん。ごめんね。
そう心で謝っていると、たんぽぽは揺れた。
『大丈夫だよ』
声がきこえた。
「「 !? 」」
と二人で顔を見合わせる。目をパチクリさせて(かわいい)
いまのなんだったんだろう。絶対にの声ではなかった。
二人で見つめる先は一つ。
『また一緒にうたおう』
たんぽぽたちは、揺れながら
そう言った気がした。
黄色のワルツ
2010.04.26
(ジローなら不思議ワールドも自然)