「六ー、お酒のおつまみいるー?」
「なんだ、つまみだけか?」
「煩悩嫌いのくせに何言ってんの。欲張らないの」
・・・・・・・マズイ。これは非常にマズイ。
いや、の持ってきたつまみが不味いんじゃなくて、事態が拙いんだ。
確かにオレは、の言った通り煩悩嫌いだ。1部を抜いて。
前は煩悩全てが嫌いだったが、その・・1部の煩悩にとり憑かれたというか
・・・自分がその煩悩を持ってしまったのだ。おう。
遠まわしに言うなってか。俺だって回りくどいのは嫌いだば。
恋というものをしてしまった。に。
しかし、俺はを好きになる前から『煩悩嫌い』だと本人に宣言してしまったし
は今でも俺が煩悩全てが嫌いだと思っている。・・・ハズだ。
ということは、俺の気持ちを一切気付いていないわけで、いい雰囲気にもって行き様がない。
たまにそうゆう素振りを見せても、素っ気なく返される。
つまりは『あうと、おぶ、眼中』ってやつだ。俺のこと男としてまったく見てないだろう。
媚も売ってこないしな。・・・・・だば。
「なかなか上手くいかねぇもんだな・・・」
「何が?」
「いや、っつか団子咬みながら喋るな。っつかなんで団子食ってんだ」
「食べたいからに決まってんじゃん」
「おい、俺はつまみでお前は団子か?」
「六、食べたかったの?残念ながら団子は元々私が食べれる分しか…」
「ココに串が何本もあるが?」
「それはカンザシなり」
嘘付け・・・明らかに団子食った後だろうがよ。(大体竹串だろこれ、簪になるか)
今更愚痴を言っても仕様が無いことだから、心に留めといてやったが。
「ん?」
「あ、曇ってきたね」
「そうだな」
「さっきまでサンサン天気だったのに」
「そうだな」
「だから日向ぼっこするために、団子持ってきたのにー」
「そうだな」
わざと語調を落として(えっと・・“トーン”を落とすか)言えば
「まだ根にもってんの?」と無邪気な笑顔で言う。
「ほら、入いるぞ。一雨きそうだ」
「はーい」
それだけで、勝手に語調が弾むように明るくなる。
こんなバレバレな態度をとってもわからねェとは、
信用されてんのか、完璧に興味ないのか・・・・・・その気はないのか。
確か何かで言ってたな・・・。それなりの反応示さないやつは2種類の理由がある。
まったく気付いていないのか、その気がないから気付かないフリをしている、と。
・・・・後者だったら、俺はどうすりゃいいんだ。
縁側を歩いてる間に色々考えたが何も良い案が出ない。
無意識に溜息をつけば「どうしたんだぁー!」と元気よく飛びついてくる。
こ、コイツの元気はドコからくるんだ・・!
「お前、あと一歩で襖にぶつかっていたぞ」
「しかもココ、ムラサキさんの部屋だしィ。壊したらタダじゃ措かなかっただろうね★」
「笑い事じゃねぇ・・」
想像するだけで恐ろしい。アイツは本当に女か。
そうなった日にぁ、雷でも落ちてきそうだ。
雷雲とも言えない、まだ雫を落とさない雨雲を見ながら居間に入った。
天気のせいか、気分的にだるい。さっきまでは穏やかな気持ちだったんだが。
あぁ、きっとがとんでもないことを言ったせいだ。想像しちまったし。
俺は黒いちゃぶ台に肘をつき、何をするわけでもなく(いや多分気になったから)の行動を見た。
・・・・・・・また喰ってやがる。
「今度は煎餅か?」
「あら?六もいるの?残念ながら六の分は…」
「もうわかったから言うな。にしてもよく食うな」
「そ?美味しいものは誰だって一杯食べたいじゃんv」
そう、は(少し)変わっている。(多分)
結構、女はどっちかといえばケーキとかの方が好きなんじゃないのか?
だが、は西洋菓子より和菓子を好む。煎餅やら団子やら餡子やら。
まぁその方が俺も好みだし、何より俺の好物を好きというのは嬉しい。
本当の好物は酒だが。しかしは大変酔うから飲ませない。
しばらくその食べてる様子を眺めてたが、ふとがこっちを向いた。
「何?六も欲しい?残念ながら六の分は…」
「もういいって」
「じゃあ何さ〜」
そう言われれば見てた理由なんて答えられない。
いや、暇だから見ていたでいいとは思いつつも、そこは言わない。
嘘も煩悩からできる行動の1つだからだ。
そこで俺は誤魔化すために、逆に質問しようとしたが…
「お前は俺のこと、どう思ってるんだ」
・・・・・・心にもないことを言ってしまった。
あるにはあるが、今言うつもりはなかった。
肝心のは特に考えもせず、「う〜ん」と首を傾げ右上を見ながら考えてた。
「世話の焼けるお兄ちゃん?」
世話の焼けるのはお前の方だ。
大体お兄ちゃんってなんだ。確かにお前はガキくさいが、妹としてみたことは一度もねぇぞ。
「ちょっと待て、兄ってそんな歳離れてねェだろ」
「歳あんまり離れてない方が普通なんだよ?」
「あぁ、そうか。っじゃねぇ。
お前がガキっぽいからだろ。少しは成長したらどうだ。嫁の貰い手がねぇぞ」
あ、と言ってから気付いた。
だけど、は何も気にしてないようでニコニコ笑っていた。
は、・・・よかっ…
「大丈夫。もう六との婚約届け書いてるから」
・・・・・一瞬、何を言っているのかわからなかった。
や、一瞬どころか、今でも理解できない。
・・・俺との・・・婚約届け?
つまり、と俺が・・・けけけ結婚すんのか・・?
「なんてうっそーん」
ズッガーン
こ、心で火山が噴火したように衝撃を受けたの一言。
頭をちゃぶ台にぶつけてしまって、額に痛みが走った。
「びっくりした?六ったらカワイイー!」
「う、嬉しくねぇよ・・・」
痛みのついでに、額に青筋が浮かんでいると思うが
俺は怯えるとかお構いなしに、を睨みつけた。
と、は「やっだー六コワーイv」と言いながら逃げ去ってしまった。
しかも縁側、外に。
「おい、!まだ雨降ってんだぞ!」
「雨気持ちいー!」
「バカ!そんな外側走ったら、滑って落ちるぞ!」
「ムラサキさん、助けてー!」
俺はを追いかけるため走るが、滑らないようにしているから速く走れない。
叫んで注意しても、体中が濡れても、お構いなしに走るにはなかなか追いつけなくて
結局、逃してしまった。
だけど、一瞬見えたの横顔は見事に真っ赤だった。
雷に追われながら
雫を捕まえる
(やっとわかったのか?なら逃げてんじゃねぇよ、お前はどうなんだよ!)
「進展あったみたいじゃない」
「あぁ?別にそんなことねぇよ(畜生、どこ行きやがった)」
「そぉ?あたしの部屋の前でイチャついてたくせに」
「Σブッ!」
「(ムラサキさん、早く追い出してー!)」
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誤魔化すのは煩悩じゃないんだ六さん・・・(ぁ
タイトルの会話はムラサキさんに相談したときの、六とムラサキさんの会話。
アウトオブ眼中はこの時初めて知った、六。(ぁ
小説のタイトルは、このあとがきの前の『その後ミニ小説』を見ればわかると思いますが
雷はムラサキさんで、雫はヒロインです。
雷のように怖いムラサキさんにヒロインに早く告白するよう焦らされ、
雨でずぶ濡れて、水のようにすり抜けてってしまうヒロインを捕まえる。
自分にしては、ロマンチックなタイトルかと(爆
しかし、六難しいな。小説によって書き方が違う我はどうなんだ(ぉぃ
2007.09.22