空は晴れ渡り、ぽかぽか陽気なある昼下がり。
窓際にちゅんちゅんと小鳥がさえずき、平凡な日常を照らす。
「骸さん、ちゃんと寝てください。大怪我負ってるんですよ」
「を抱きしめていれば、早く治ります♪」
いつもよりかなり上機嫌な骸さんに抱き締められながら、ベッド脇へ座っている。
リンゴを食べ終え、片づけをしている千種が給仕室へ消えると、窓際の小鳥が慌ただしく飛び立つ。
「骸さん!アイス買ってきましら!」
犬が勢いよく病室へ駆け込み、一気に騒がしくなる。
がさがさとスーパーの袋をあさる犬は、同じようなアイスを私と骸さんに、そして自分用のアイスをとり、
犬を買い物に行かせた本人であるM.Mに、残りの袋をぽいと投げ捨てる。
たしかフルーツパフェを注文していたであろうM.Mは投げられ、犬に激怒。
「ちょっと!パフェなのよパフェ!崩れたらどうしてくれんのよ!」
「うっへー!文句言うんらったらはじめっから自分で買いに行けびょん!」
「骸さん、ビターとミルクどっちがいいですか?」
「半分こしましょうか」
先にビターを受け取って、M.Mがパフェをとってさらに投げ捨てたスーパーの袋を拾う。
中にあったクッキーアイスを手にとって、少し離れた場所でおとなしくしている彼女を呼ぶ。
「髑髏、これ。髑髏のぶんはこれみたい」
「・・・ありがとう」
小声ながらも、M.Mと言い争ってた犬に、続けて髑髏はお礼を言うと、犬は照れながらそっぽを向き騒動はおさまった。
髑髏がきたことで、犬も世話意識がちょっと出たかな。どっちかというとまだ髑髏が犬を世話してるけど。
再び穏やかな時間が戻り、私もアイスを食べ始める。
ここはれっきとした病院の中。骸さんや髑髏、フランがいまここで入院をしていた。
アルコバレーノの命、そしてそれらをとりまくすべての命を巻き込んだ、虹の代理戦争。
苦戦を強いられたが、最終的にはボンゴレボスが復讐者を倒し、そしてアルコバレーノ受け継ぎシステムを改善し、無事に私たちの戦いは幕を下ろした。
「・・・って、なんか外騒がしいですね」
静かになったことで、病室ではない外から騒音がきこえてくる。
なんだか誰かの叫び声が聞こえたり、なにか壁が壊れるような音もするし・・・。
派手な崩壊音も響いてきたことで、そろそろ身の危険を感じてきて避難しようと提案する。
骸さんの腕を外し起き上がろうとすると、再び骸さんに引き寄せられ、私の目の前に見覚えのあるチェーンが壁を突き破ってくる。(え・・・)
ドゴッ
「ってか今度は逆のカベ貫いてるしーー!!」
・・・このチェーンは雲雀恭弥だとして、いまの声はボンゴレだな。
私をかばったせいで、骸さんの髪にチェーンはかすっており、はらはらとキレイな髪が床へ舞う。
床へ舞ったのは髪だけじゃなく、ちゃっかりお茶中だったみんなのデザートたちの食べカスまで散らばり、壊れた壁もあり辺りは一瞬にして悲惨な光景に。
「・・・チョコアイス」
「骸さん、チョコアイスならこっちのもありますよ」
なんとか骸さんをなだめようとするも、骸さんはまんまとアルコバレーノの誘いにのってしまい、そのまま戦場へ。
わざわざ一番遠い雲雀恭弥に集中的にを攻撃しかけてるのは、ってか最近なんだか雲雀に攻撃的な骸さんにはどうしたのかと心配になるが。
まあ雲雀も本命は骸さんだろうし。もう2人で外でやってきたらいいと思う。
持っていたビターチョコアイスの自分の分を食べきってしまおうと、参戦してる犬たちを眺めながら髑髏と並んで食べている。
まあなんかあれば病院側の人がくるだろうし。それで収まる連中だとは思ってないけれど。大丈夫だろう。
この戦いを超えて、なんとなく一周り大きく成長した気がする。
その余裕が、たぶん共に戦い抜いたこの人たちとの絆であることは、無意識に理解してる。
(骸さん・・・あなたの周りにこんなに人がいる)
帽子が吹っ飛ばされたことで参戦しにいった千種を見送る。大勢ではしゃぎまわる中に、千種も犬もいる。
この未来をどう想像できただろうか。マフィアに実験体にされ、牢獄の中にいた私たちに。
いまじゃ戦友がいて。そして近くには、似た境遇から仲間になった髑髏やM.M、フランもいる。
(これもボンゴレが創った世界だというのか)
眺めていた壁の大きな穴から、とつぜんひょこっと白い頭が出てくる。
目が合うとその顔はニコッとわざとらしくほほ笑み、突撃してきた。
「!は僕と遊ぼうか」
「ちょ!くっつかないでよ白蘭、いまアイス持って・・・!」
チョコアイスをかばいながら逃れようとするも、結局バランスを崩して複雑な体制になる。か、関節と腹筋・・・!
甘いもの大好きな白蘭も目ざとくアイスを狙い、2人でアイスを奪いあう形になる。
「これ僕も好きなんだ。ミルク?ビター?」
「ビターだけど骸さんと半分なので自分で買ってきてくださいっ・・・!」
「と半分なんて、ビターでもきっとスイートな味なんだろうね。食べたいな♪」
また変態みたいなセリフをこうも恥ずかしげもなく言える・・・。
アイスが溶けそうなのでいい加減、腹でも蹴って退かせようともしたが、その前にぎらりと光るものが白蘭の首に突き付けられる。
「から離れて」「ど、髑髏・・・?」
隣りにいた髑髏は槍を持ち出し、白蘭を威嚇する。
こ、これは・・・まさか髑髏、私を守ってくれてる?(きゅーん)
髑髏にときめいてるけど、目の前の白蘭は不敵に笑い、その体制のままチョコアイスをぺろりと食べる。
「クローム髑髏ちゃん。キミじゃ話にならないと思うけど?」
「じゃあ2人ならどうですかねー」
陰りができて、なんだと頭上を見ると、白蘭の頭の上に巨大リンゴが落ちてくる。(!?)
避けるために白蘭が退いたことで、その背後にいた人物の仕業だと判明する。
「さんに触るとししょーがうるさいですよ」
フランのリンゴが普段より赤いような。気のせいかな。
髑髏とフランの2人が好戦的に構え、さらには傍観していたM.Mまで白蘭を追いだすように、壁の向こう側へ追いやる。
「アンタたち、せっかく骸ちゃんといい感じだったのになに邪魔してくれてんのよ!10万払いなさいよ10万!」
「(いつM.Mたちがいい感じになったんだ・・・)」
若干つっこみたいところはあったけど、3人によって流されてく白蘭を見て、ちょっと感動してしまった。
爆音で騒がしい中、がちゃっと扉を開くような音が聞こえ、安堵した。
よかった、やっと病院側の人がきてくれた。遅い気もするけど。
そう一瞬で思ったが、ドアの前に現れた人物を見ると、自分の想像していた白衣をきたような、また看護師さんでもなく。
「お、!何してんだ?」
「こんにちは!」
・・・跳ね馬と知らない男の子がきた?だれだ。
そしてこの人は性懲りもなくまた呼び捨てか。やめろっつーのに。
相変わらず親しげにくる跳ね馬に、こっちは警戒心全開なんだけれど、
不意に流れ弾・・・というかもう誰の武器の仕業なのか不明だけど、衝撃がきて、
跳ね馬に引っ張られ、私は避けられた。が。
誰の攻撃を受けたか、銀髪の長髪が吹っ飛んできて、そのまま跳ね馬に当たり、後方の壁を衝突する。
「いってー・・・。おいスクアーロお前そんな体で暴れんなよ」
「うるせえぞおおお!! テメーだって怪我人だ、ひっこんでろ!」
隊長さんが立て直し、2人で言い争ってるが、ここ骸さんの病室なんでさっさと出てってくれないかな・・・。
(また助けられてしまった)と思いながら、面倒くさくなりそうなこの後に2人を睨む。
それと同時に、いままで手にあった感触がなくなってることに気がつく私。
「あ、アイス!!」
叫んだ私につられるように、2人も私の指さす方向を視線を向ける。
守りに守ってきたアイスが、ついに私の手を離れ、跳ね馬の口に刺さっていってしまった。
あぁぁ・・・もう骸さんをなだめられるものがなくなってしまった。
口に入ってしまったのだし、諦めてそのまま跳ね馬にあげると、跳ね馬は嬉しそうにアイスの続きを食べる。
「なんだもらっていいのか?女の子は間接キスとか気にするんじゃねえか?」
「いやそれ最後口つけたの白蘭だし」
「ブッ!!」
「「 Σ汚っ! 」」
白蘭と聞いた瞬間に吹きだす跳ね馬に、隊長さんと二人でつっこむ。
そんなに白蘭がいやだったのか。申し訳ない。早く言っときゃよかった。
私も白蘭だったらいやだったしな。ぶっちゃけもうそれで食べない気だったし。
水を飲んで口直しして「野郎とは進んで間接キスしねえよ・・・」こんなこと言う跳ね馬に、隊長さんが呆れている。
「女も大して変わんないでしょう」
「変わる変わる。それにだから進んで食ったんだって」
「それはそれで問題あるな」
隊長さんが不審者をみるような目で、跳ね馬から距離をとってる。
ぎゃーぎゃーまだ続く乱闘の中、隣りの部屋から穏やかな声がきこえてくる。
「スクアーロ、ぼくの幻術で補ってるからって、あんまり派手に・・・」
土煙からゆらゆらと姿を現した彼に、私の目の色が変わる。
「マーモン!!!!」
「う、うわ! お前・・・!」
宙をとんでいたマーモンに抱きつき、頬を寄せる。
嬉しさではじけとんだ理性で、叫んだ声は大きく広がった。
その私の叫び声とともに、止む乱闘。
マーモンに夢中になる私は、周りのことなど聞こえない。
「な、・・・?」
「ししっ。マーモンまたやられてやんの」
「あー。さん、そういう趣味だったんですねー」
周りの白い目など、私には関係ない!! いや関係はあるんだろうけど、そんなことどうでもよくなるくらい、マーモンかわいい!!!
さっきまで戦闘での騒音は止む代わりに、今度はきゃーきゃーと黄色くざわめく病室。
「雲雀恭弥、一度休戦にしましょう。先にあっちから殺してきます」
「あぁ。いいんじゃない?咬み殺しても」
なんとなくマーモンに殺気が向けられたように感じ、意識をしっかり取り戻した。
見ると骸さんが近くまできていて、私の手からマーモンを奪い取ろうとする。
え、いや、いくら骸さんでも、マーモンは放したくない。
「、それをこっちに寄こしましょうか」「い、いやです・・・」「ふ、ふざけるな!ぼくは被害者だぞ!」
抱いているマーモンが訴える。
あれだけ放せ放せともがいていたマーモンだけれど、いまは大人しく私の腕の中にいる。一応身の危険は察してるようだ。
マーモンを守るように骸さんから遠ざけると、明らかに骸さんの額に青筋が浮かびあがる。
「ぬいぐるみなら好きなのをいくらでも買ってあげます!」
「ぬいぐるみじゃないです、マーモンがいいんです!!」
「スクアーロ早く助けてよ・・!!」
「お、おう!待ってろぉ」
マーモンが助けを呼んだことで、隊長さんがこのマーモンの取り合いに参加して。
「マーモンくん、内臓つくってもらってるから殺しはしないよ?とりあえず一回こっちこようか」
白蘭までマーモンを取ろうとして。
「ちょっといつまでもみくちゃにしてるの、さっさとやりなよ」
武器所持の雲雀もきて。
「こういうときはボスのお前が鎮めろ」ドガッ
「え!? ぎゃ、リボーンお前ー!」
アルコバレーノリボーンに蹴飛ばされたボンゴレがきて。
「お前ら待てって! 力づくで解決しようとするな!」
部下が不在のため、へなちょこの跳ね馬もきて。・・・・え、へなちょこがきた?
ドジふむ跳ね馬ディーノが介入してきたことで、嫌な予感はしたけれど見事に的中する。
みんなをなだめようと中心へ入り込もうと、大きく踏み込んだ跳ね馬はそのままバランスを崩し
中心にいたこの人は、そのまま周りのみんなまで巻き込み転倒。
いたたたたた。やっぱりというか、お約束すぎて・・・。
マーモンをかばいながら、体制を整える。
すると飛ばされたせいか、ボンゴレが私の目の前まできていて。
「いててて、だ、大丈夫?」
自分も痛そうなのに、まっさきに近くにいた私を心配する。
それに反応した跳ね馬も、まっさきに顔を上げ、手を合わせみんなに謝る。
もちろんそれを許すようなメンツじゃなく、全員が跳ね馬を睨み戦闘態勢にはいってく。
遠くにいた面々も、それぞれを心配するように近づいていき、この病室に何十もの人。
( これが、ボンゴレ十代目が創った世界 )
閉じ込められた世界にいた私たちは復讐を誓った。
この狭い牢獄の中で。ひどい未来を築くと危惧した彼らに、その復讐を打ち破られて、私たちは何を望んだのか。
骸さんを倒されたあの日。彼らを恨んだのだろうか。
その後 私たちをなにかあるたび救い、その彼らに私たちは何か望んでいたはずだった。
(それがたぶん、この世界)
仲睦まじいわけじゃない。話したこともない人もいる。それなのに、その間に感じられる絆のようなものは。
このたくさんの絆のようなものが、私の夢だったのかもしれない。
復讐を誓った私たちの、望んだ世界だったのかもしれない。
「・・・?」
骸さんの案じるような声がきこえて、上体を支えてもらって起こす。
跳ね馬を数人で責め立ててる光景を眺めてて。それがおかしく見えて、少し笑う。
それを見ていた骸さんもほほ笑んで、私を立たせる。
「、なんだかすっきりした顔していますね」
「・・・はい。とっても、清々しいです」
骸さんの笑顔を見ていると、とても嬉しい気持ちになる。
それは千種も犬も髑髏もM.Mも一緒。
ほかの人たちにも、そうとははっきり言えないけど、きっと嫌な気持ちにはならないんだろう。
誰かの笑顔を見ようと、その腕の中の存在に目を向けようとしたが、瞬間 そこにあったはずの感触がなくなっていることに気がつく。
「あ、マーモン!!」
また私の叫び声に、全員が注目する。
骸さんとほほ笑みあってる間にすり抜けていったマーモンを追いかけ、また宙を飛ぶ彼に、飛びつく私。
すぐに追いつきぎゅっとまた抱きしめられたことに満足していると、飛びつき同様に宙を飛んでいた私に、阻止しようとしていた骸さんの腕が絡まり。
バランスを崩したことで髑髏の上に落ちそうになるところを、千種が骸さんを引っ張って、犬がそれを手伝って
髑髏を退かして私の下で腕を広げて待機する白蘭に、背筋を凍らす私を見て
白蘭に向かってヴァリアー隊員全員を投げたフランは、投げた白蘭の先にさらに雲雀がいたことに気づきまっさきに逃げていって
もちろんイラつきスウィッチが入った雲雀に、なぜか隊長さんが殴られて
戦闘が始まったと勘違いしたのか、静かにしていたヴァリアーのボスXANXUSが銃ぶっぱなし始めて
『この場をおさめろ』と蹴り飛ばされ私を助けるように仕向けられたボンゴレと跳ね馬の上に、私たちはダイブしてった。
――その間、わずか1秒であった。
牢獄の中の中
ボンゴレごめーん!
いたたたた・・・。
、怪我はありませんか?
いい加減、ぼくを放せ!
リボーン、ひでえなぁ。
2013.10.08
END. Special Thanks!!!!!!!!!