骸さん。いま、いますぐあなたに会いたいです。
あなたに謝りたい。そしてあなたもとへ帰りたい。あなたと居たい。その一心で――


『ティリリッ バトル開始一分前です』

「ほら始まっちゃったじゃない!! アンタが余裕こいて歩いてるから!!」
「急ぐなら、もっと早く走れば?」
「うっ、うるさっ…これでも全力だっ」
「君につきあってたら日が暮れるよ」ひょいっ
「え、ちょ、なにす……」

「きゃああああああああああ!!!!」


あなたに会いたい一心で、私、空飛んでます☆
(※俵持ちで)




冗談はさておき。
雲雀恭弥、なんて奴だ。ヒト一人抱えて、まったくスピード落とさないで走るとは…。
抱え方や乱暴さで、大切に扱われてないことは伝わってくるけど。
後ろ向きに抱えられてるせいで、どこへ向かってるかはわからないけれど。目まぐるしくかけ巡る景色に、少し事の緊張感を思い出した。
そうこうしてるうちに、公園のようなところへ景色が変わった。そういえば骸さんたちの集合場所はどっかの広場だって言ってたような・・・。
(骸さん、髑髏、フラン・・・どうか無事でいて)
祈ることしかできない私は、抱えられたまま両手を握り無事を念じる。
後ろを向いて超速度で移動してるため、若干気持ち悪くなってきたなと思ってきたころ、少しずつ騒音が聞こえてくる。そして人の話し声も。
その声に反応して祈ってた手を解き、真剣につむってた目を開こうとすると、完全に目が開き切る前に、一瞬の浮遊感と地面へ転がりこむ衝撃。


「ぎゃっ!」ゴロゴロゴロ

「借りは返したよ」
「恭弥!!」

「っ! !?」


放り投げられたのだと理解した直後の声は、地面へ打った痛みなども忘れるほど、聞きたくてしょうがなかった声だった。
「骸さんっ!」
体をうまくよじり、その声に向き直ると、そこにはすでに傷だらけの彼。
すぐに駆け寄ろうとしたのに、すっかり忘れてた手錠が邪魔して、うまく起き上がれない。
じゃらっと手錠の響いた音に、私を焦った表情で見ていた骸さんの顔色が変わる。
「雲雀恭弥・・・なぜ君がを?あの手錠はなんです、こんなところに彼女を連れてきて、になにかあったら殺しますよ」「(ひい、骸さん怒ってる・・!)」
けど怯えながらも、骸さんの言葉に喜んでしまってる自分もいて。相変わらず空気読めないこの自己中心さに嫌になる。
復讐者と思われる包帯の男を飛ばし、雲雀がちらりと骸さんを見る。

「人質に決まってるでしょう」
「この戦いを終えたら、次は君を殺します」

この二人が火花散らすときはだいたい骸さんは小馬鹿にしたように余裕見せてるけど、
今に限っては二人とも本気で殺気飛ばしあっていて、とても昨晩同じ作戦を組んだ仲間だとは思えない雰囲気になっている。

すぐ骸さんも戦闘に戻って、復讐者と対峙する。
戦況はパっと見、最悪。もうすでに何人か倒れてる、それもビッグネームばかりが。(白蘭・・・っ)
ヴァリアーの隊長さんや、跳ね馬まで・・・どれだけ力を隠しもっていたの、復讐者。
スパイをしていたときによく見たその顔。
復讐者は全員顔を包帯で覆っていたが、慣れれば個人が見えてきていた。
この顔は、よく"見られていた"顔だった。
(いま思えば、私がスパイだとわかった上で泳がせて見張っていたから)
包帯の奥に隠されていた、あの目に見られていたのだと思うとぞくりとする。

悪寒を覚えた復讐者の目は骸さんたちから外れ、私をとらえる。
まずいと思ったときには遅く、逃げようとして起こした体は、勢いよくまた地面を転び
私の首を掴んだ復讐者の手によって、私は身動きとれないようにおさえつけられた。
「がっ・・・!」
「狙ってくれと言わんばかりだな。わざわざ人質としてくるなんて」
喉を圧迫されてまともに呼吸ができないっ。
命を危険を感じて、"奥の手"を使おうと思ったが
上にいた復讐者は途端に私から手を離し、ワープしてった。そしてそれを追うように目前にくるトンファーと三叉槍。

「・・・おや。君にとってはただの人質だったんじゃないんですか?」
「僕が君を相手に釣る人質だ。部外者に獲られちゃここまで運んできた苦労が水の泡だよ」

悪かったわね、ずいぶんお手数おかけしたようで。
雲雀と合流した骸さんが いやに不機嫌そうに見えたのが気になったけど、私も雲雀の発言が癇に障り意識はそっちへいく。
二人の背中が見える。そしてやっぱりというか、私はまた助けられていた。
雲雀が復讐者に追い打ちをかけている間に、骸さんが私をゆっくりと抱え上げ、茂みに隠れていたユニたちの元へ連れて行く。
横抱きにされてて覗き見る骸さんの顔色は真っ青で、とてもいい状況とは思えなかった。
骸さんたちが負けるはずないってわかってる。ぜったいに勝てるってなぜか根拠もなく信用できる。だけど…



「。・・・これが僕たちの生きる世界です」



骸さんの顔には、なんの迷いもなく。凛々しく、誇り高かった。
私を諭した骸さんに、私はしばらく見とれ、そしてゆっくりと頷いた。
『みんなと同じ世界が見たいです』
骸さんたちは無暗にケガをしているわけじゃない。この傷の先に、必ず未来がある。
傷ついていく様をただ見ているだけじゃない。そこに、必ず私たちの世界がある。
骸さんが連れだしてくれたから、もう怖くない。この世界に一人じゃないから。
受け入れたこの世界に、みんなと居たいから。だから―あなたの元へ帰りたい。


「骸さん―――― ごめんなさい 」


真顔で驚く骸さんは、少しだけ笑って。
私を茂みの影へ座らせ、私の頭をつつみながら額にキスをくれた。

「僕と離れた世界で、生きられると思わないでくださいね」


















~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

雲雀に投げ捨てられて、雲雀にも助けられる。
最後の最後でヒバ要素満載。
犬と千種?え、もう十分いちゃいちゃしたでしょう・・・←





2013.09.13