ボンゴレの召集会議の内容は、この代理戦争に全員で協力し、とつぜんやってきた復讐者たちを倒したいというものだった。
好戦的な人たちが見事に集まったこの会議では、ただ"強敵"の一言で釣れたようなものだ。みんな協力する形となる。
そうすると次は作戦。相手チームで一番強いとされてるイェーガ―という復讐者に、もちろん注目するわけだが。
全員が全員、各ボスクラスの人たちはそいつと戦うことを望んだ。そんなバカな。
もちろん・・・うちのボスも。
(骸さんまで。なに考えてるんだ。そんなの相手にしたら確実にケガするし、最悪…)
最後の可能性を振り払う。大丈夫。こんだけボス格そろってるんだもの。それはない。
でも楽な戦いじゃないことは確かだし、だいたい勝ち残ってたうちのチームで骸さんだけが出るって私は納得いかない。

「その時間稼ぎには、フランとクロームも入れましょう」
「えっ!?」

作戦会議中の部屋に響く、私とボンゴレの声。ボンゴレは今までしゃべってたが、突如響いた女の声はだいぶ目立ったようだ。(はずかしい・・・)
骸さんは私の頭をポンポンとなだめながら、ボンゴレへ向かう。するとボンゴレも私と同じ意見なようで。
フランはともかく。髑髏までまだ参加させるの…? 内臓が戻ったとはいえ体力はまだ本調子じゃないだろうし。ともかくといったフランだって、まだ小さい子供だ。
それでも骸さんは2人の幻術は戦力で時間稼ぎに最適と主張し、結局うちのチームからは骸さんフラン髑髏の3人が出ることになった。
まあ・・・いきなり戦闘に出してもらえると思ってなかったけど。やっぱり私は無力だった。

明日、いつ戦闘が始まるかわからないから、今日は早めに解散し、おのおのコンディションを整えようということで会議を終える。
さっさと出て行くキャバッローネにヴァリアー。私たちも帰ろうと立ちあがると、早々に骸さんに手を引かれ抱きしめられた。(え・・?)
ジャキンッ
「もう、そんな警戒しなくてもいいじゃない。僕はただとデートしたいだけだよっ」
「おのおのコンディションを整えると言ったでしょう。今日一日は僕につきっきりです
白蘭のボックス兵器と骸さんの三叉槍から火花が飛び散る。
うん火花が飛び散ってるのは、武器からだけじゃないみたいだけど。相変わらずだなこの2人は。
幸い白蘭は別の用事があったようであっさり引いてくれ。白蘭を追い払うように見送ったあと、私たちは沢田邸をあとにした。
私は明日の戦闘じゃ無力。ただ傍観者となるだけ。
今日のうちにできることは・・・敵の調査。

「、バミューダチームのところに行くなんてバカなこと言い出さないでくださいね」
・・・はい

速攻阻止された。骸さんは人の心読みすぎだ。
そうなると明日の戦士へのサポートが無難だろうか。
たぶんそういう意味で、今日一日付き合えって言ったんだろうし。まあ正直そんなつもりはない。
少しづつ骸さんから距離を置いて、最後尾にいた犬にぼそっと話しかける。
「犬、今日のご飯なにがいい?」
「えっ!? 俺の好きなのいいんか!? 肉!」
予想通りだった犬の答えに苦笑する。
もちろんシンプルな、いっそ生肉もがっつり食べる犬にとって悪気はないんだろうけど、なんだか作る立場としては味気ない気がして。
どういうのがいいか、一応念のため訊いてみると、それはさっきみたいに思っていた反応ではなくて。
私が言った意味が伝わったのか、ふと真顔になり「うーん」と悩み始める犬に、少し驚いた。


「の料理、なんでも好きらし」
「え?」
「あ、でもやっぱあれ、シチューがいいびょん!」


の味ーってするのは、やっぱりシチューが一番だ、と。
てっきりステーキやら焼き肉やら、即答されると思ってた私は不意を突かれたように何も言えなくなってしまって。
(あ、っていうか、ちゃんと味わってくれてたんだな・・・)
なんだか犬がそんな風に思っててくれたことが意外で。でもそれはとても嬉しいことで。
たしかになんとなく節目のときだったり記念だったりするときに、シチューを作ってみんなで食べてた気がする。
あの牢獄から帰ってきたときも。みんなの好物だからって。
髑髏を迎えたときも、ヘルシーランドにあった少量の材料でたくさん作れるからって。
フランを迎えたときも、フランスから帰ってきてフレンチに飽きてシンプルな一品物食べたいからって。
なんとなく。シチューを作ったときは、みんないつもより食が進んでる気もして。残したことなんて一回もなくて。
(あ、うそ・・・思ったより嬉しいかも)
気恥しく思えてきて、少し犬から顔を背ける。どうしよう、少し顔にやついてるかも。

不思議に思ったのか、犬は私を追うように顔を覗いてきて、それを避けるように犬の顔を押しやる。
「な、なにすんだびょん!」
「なんでもないんだから見ないで」
「う、うそだびょん」
途端に犬が大人しくなって。私から背けた犬の顔は、少し赤くなって、照れ隠しするように空を睨んでいた。(あ、見られたかな)
それに少し気まずくなって、逃げるようにみんなから離れる。
買い出しにいってくると一言残して、骸さんに文句言われる前に私は姿を消した。



「・・・犬は、の照れた顔に弱いですね」

「んなっ!? そ、そそそんなことないれす!!」

「柿ピーは嫉妬深いわよねぇ〜。で? 犬といい感じだったけど?(ニヤニヤ」

「っうるさいM.M」





*





商店街へ繰り出し、晩ご飯の材料を探す。
たまにはと思って並盛で買い物しようとしたけど、おぉー。いっぱいある。品ぞろえ豊富。
メニューはシチューと決まってたけど、これは品数増やしたい感じ。シチューに合うサイドは何かな・・・。
八百屋さんでじっくり見てると、きゃぴきゃぴと女子の楽しそうな声が。
とくに気にするでもなく、私は私の買い物をしていると「・・・?」と自分を呼ぶ声。

「・・・あ、髑髏」
「・・・買い物?」
「そう」

きゃぴきゃぴ可愛らしい女子グループの中に、知った顔の髑髏と遭遇。あら偶然。
とくに動じるわけでもないけど、並盛の制服の髑髏は見慣れなくだれかわからなかった。
まあでもだから会ったからなんだってわけでも、私にとってはないんだけど。髑髏は家事をしている私をいつも放っておくことはなく。
私の買い物を手伝おうとしたのか、一緒にいた女の子2人に別れを告げようとする髑髏を、私が止める。
正直買い物はぜんぜん一人でいいし。せっかく髑髏だって友達と遊んでるんだから遊んでてほしいし。夕飯までに帰ってくればいいし。(って私、お母さんか)
「ツナさんと話してた・・・クールビューティなお姉さんです」
髑髏と問答してると、ぼそっと呟く髑髏のともだち。
それに反応してちらっとお友達2人をみると、髑髏が紹介してくれる。


「京子ちゃんと、ハルちゃん」

「笹川京子ですっ」

「三浦ハルです!」

「こっちは・・・一緒に住んでる」

「です。髑髏がお世話になってます」


軽く会釈してあいさつすると、2人もうやうやしく頭を下げる。
よかった。髑髏はいい友達もったみたいで。うんうん。
母親染みたことを思って納得する。これなら並盛に預けても大丈夫だな。骸さんたちにも報告しとこう。
あいさつを済ませたところで買い物に戻ろうとすると、その"京子ちゃん"が私を呼びとめる。
「あ、あの!もし迷惑じゃなかったら、一緒に買い物しませんか?」
「はひっ!京子ちゃんナイスです!そうしましょう!」
・・・え?
一緒にってなんだ。だって私材料買ったら、あと帰って作るだけよ。
一人疑問に思ってるあいだも話はなぜか進んで「いいの・・・?」と髑髏が二人にきいてる。そして二人は元気よくもちろんと頷いてる。
いや。いやいやいや。べつにホント手伝ってもらうほどの量買わないし、べつに一人でもいいんだけど・・・。
しかしすでに私についていく方向になったのか、全員私の買い物の再会をにこにこと待っている。・・・えぇぇぇ。

まあべつに居ても困ることではないから、そのまま買い物を再開する。
さて。今日は犬のために、お肉たくさん入ったシチューにしようかな。その分野菜も多くしよう。
野菜たちを見つめてると、もちろんその視線に女子3人も注目する。
「、なに作るの?」
「シチュー。並盛で買うことあんまりないから、ちょっと品種と値段に迷ってて」
黒曜のほうのスーパーとは、もちろん値段も違うし、スーパーで推している品種も違うようで。思うようにスムーズに買い物が進まない。
それを見かねた並盛出身女子2人は、ここぞと手をあげ、意気揚々と会話に参加する。
「シチューのじゃがいもなら、荷崩れしにくいメークインがいいですよ!ほら今日はメークイン特売です!」
「え、なにそれ荷崩れしにくいとかあるの」
「ありますよ〜!あとじゃがいもは大き目に切ったほうが食べ応えあってぼそぼそしにくいですので、いっぱい買っていきましょう!」
「あ、ホワイトソースにえのきもいれるとおいしくなるよねっ」
お?お?と戸惑ってる間に、ぐいぐいとひっぱっていく女子たち。
な、なんだ。いまどきの子はそんなに料理の豆知識に富んでるのか。この子ら女子力高いぞ。
何気にその中にも髑髏がなじんでるあたりが恐ろしい。ま、まあ・・・髑髏も料理ふつうにできてたしな。
適当に生活するのに困らない程度にやってきた私とは違うらしい。
あぜんと女子3人がシチューについての豆知識を交換する姿を見守る。しかし・・・ちょっとこれは楽しいかもしれないぞ。



「シチューのサイドはなにがいいと思う?」

「サイドですかっ!ハルはやっぱりサラダが食べたいですね」

(犬に野菜食べさせたいけど)・・・うち生野菜食べない人がいるんで、他にある?」

「じゃあロールキャベツとか!トマトベースにすると、トマトの酸味があとで食べるシチューのおいしさを引き立てるし、野菜もとれますっ」

「きのこのソテーで野菜と一緒に炒めるのも、おいしいですよ♪」

「私は、鮭のムニエル。バルサミコ酢でソース作ると合う」



おぉ・・・。ポンポン出る出る。女子力末恐ろしい。しかしこれは楽しい。
それぞれと意見を出し合いながら、それに関して調理するコツやらも一緒にきく。
結局思っていた倍の量で買い物をしてしまって、ちょっと疲れてしまった。そんなときも、ここで女子力発動の3人。
「疲れましたね〜。どこかでお茶しませんか?」「近くに新しいケーキ屋さんできたよ!」
女子力すげぇ・・・。どうしてそんなきゃぴきゃぴできるのか。そんなの柄じゃない私は、ついていけんよ。
しかし買い物に付き合ってもらったお礼もかねて、今度は私が3人に付き合うことにする。
ふと骸さんの『今日一日付きっきり』宣言を思いだして早く帰らなきゃとも思ったけど、ここのチョコケーキ買ってって許してもらうことにする。

ケーキを注文して落ち着くと、だいぶ楽に話せるようになったハルちゃんに突如質問される。
「はい!直球にききます!さんは、ツナさんとどういうご関係ですか!」
「ツナ?」
「、ボスのこと」
・・・ボス? あぁ、ボンゴレのことか。赤の他人だよ」
「う、うそです!ツナさん、さんのこと見て赤くなってましたもん!」
うん、それたぶんうちの連れのせい
骸さんがところ構わず抱きしめたり頬にキスしてきたりするから、もうボンゴレ内じゃ私はただの骸さんの愛人でしかないだろう。
まあそんなこと言うわけにもいかず、「髑髏がお世話になってる相手ってだけ」と適当にごまかしといた。本当は、恨んでる相手でもあるけれど。

正直、逢ったことがなかった私にとってボンゴレ十代目は
マフィアを統べるボンゴレのトップで極悪人で、骸さんたちを傷つけ牢獄に送ったやつとしかイメージがなかった。
そりゃあ顔を見ないうちは、恨むに恨んでた。そんなやつが統べる世界を、許せなかった。
けれど実際に会ったボンゴレ十代目は、拍子抜けするほど一般人で。言われるまでマフィアの風情をかけらも感じないほどだ。
情けないほどなよなよとした態度は、いざボスとして人前に出ると一変してしっかりとそこへたたずむ。

(あのボンゴレなら、骸さんを・・・)

席を立ち、自分の分の会計を済ませる。
帰らなきゃいけないことをお世話になった髑髏の友達に言い、私は急いで黒曜へ帰る。
明日、最高のコンディションでいてほしい。だから、私にできることをしたい。
お腹を空かせているみんなを想い、みんなのもとへ。

たくさん作るから、みんな残さず食べてね。


















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ついに外でのお友達を作る。





2013.09.11