どんっ
とそびえ立つ、今回の召集の集合場所。を、想像していた。
まさかいきなりボンゴレの本拠地。ってか、生まれ育った実家に行くことになるとは思ってなかったから、すごく緊張していた。
ど、ドレスコードとかあるでしょ・・・。だってあのボンゴレボスの実家だよ。どんだけでかい城なの。
骸さんが「そんなの気にしなくていい」と普段の黒曜の制服のまま引っ張りだされてきてしまったけれど
いやもしドレスコードがなくったって、私がそんな豪華なところをこんな格好で歩きたくないし、もう昨日のホテルで懲りたし。
そわそわしながら骸さんたちについてって数分。・・・え、なんかどんどん住宅街に入ってくけど。
あぁ!抜け道か!まあそりゃそうだよね。まさかイタリアの本拠地みたいに戦力揃ってるようなとこじゃなきゃ堂々と構えらんないよね。
そわそわそわそわ、また落ち着かないで進んでると、ある家の前で骸さんが止まる。
「ここです」
「・・・・・え?」
ふっつーの一軒家。庭と縁側と、2階にはベランダがついてるような、ごく一般的な一軒家の前。
しっかりと表札には「沢田」と書かれていた。
う・・・・・・うっそーー!!?
え、この下に抜け道があるとかじゃなくて!?この家が、ボンゴレのボスの家!?ちっさ!!ふっつう!!
今度はわなわなしながら、その一軒家を見てる。そうすると、家の中から一人の少年が出て、骸さんを見ると中へ招きいれてくれる。
骸さんたちのあとについてくと、"山本武"と呼ばれたその人とすれ違いざまに目が会う。
「ん?おまえ見ない顔だな。かわいいんだなっ」
「はい?」
もちろんそんな不審なこと言うこの少年には、骸さんの三叉槍がもれなくつっこんでくる。
寸でのところでそれを避けたこの少年はボンゴレの守護者らしい。(避けた!すっご)
そういやギリギリ復讐者の牢獄にスパイしに行く前に、犬と戦ってるところを見たことがあるような・・・。
この話は暗黙の了解で、禁句扱いになってるけど。ちらりと見ると犬はケンカをふっかけてた。
骸さんがさっさと私の腕を掴んで階段を上がってく。
辿りついた部屋はごく一般家庭の少年のような部屋で。そこに、今朝初めてみたボンゴレとその他数人がいた。
「あ、骸!きてくれたんだ!!」
「この召集自体には、興味がありましたから」
本当かどうか怪しい骸さんの発言をしり目に、私も通された席へ座る。
すると視線を感じて。視線を合わせると、ガラの悪いヤンキーみたいな少年が私をガンつけてた。(タコみたいな頭・・・)
「お前だれだ。骸、一般人を連れてきてんじゃねェよ!」
「一般人じゃないんですけど」
なんだコイツ。初対面の相手をガンつけ、失礼なことを。何様だ!
まあここにいる黒曜の人は、みんなボンゴレと接触あるからね。しょうがないんだろうけどね。私も初めて今朝ボスと会ったよ。
私が不機嫌な顔してることに焦ったのか、わたわたとボンゴレ十代目がそのヤンキーを抑えようとする。
「ち、ちがうよ獄寺くん!この人は骸の彼女で…」
「か、彼女ッ!? よ、余計連れてきてんじゃねェよ女連れなんてふざけんな!」
一般人でも、彼女でもないから。そしていい加減、骸さんは誤解といてくださいよ。なにニヤニヤしてんですか。
いつものように私の腰を抱いて自分のほうへ引き寄せる骸さん。それに顔を真っ赤にさせてあたふたしているボンゴレたち少年軍。
あ、普通のこのぐらいの年頃の少年はこういう反応するのか。
なんだかもう抱き寄せられること自体には日常茶飯事となって慣れてしまってたけど、改めてこういう反応されるとやりにくいな。
居たたまれなくて骸さんの腕から抜け出そうとしてると、下の階から怒声が聞こえてくる。
聞き覚えのある声なような気がしてそのままでいると、ドアが大きく放たれヤンキーがまた増えた。
ボスのXANXUS含めるヴァリアー全員が揃い、「狭い」だとか文句を多くこぼしながら座ってく。怒声は隊長さんのか。
視線が伝わったのか、隊長さんは私のほうを見ると、途端に目を大きく開かせ顔を真っ赤にして背ける。(・・・え、なんで?)
「・・・隊長さん、今日マーモンは?」
「ま、マーモンはいねえ。アルコバレーノはこの召集に呼ばれてねえはずだぞ」
な、なんだってーーー!!!!
ちょ、なんでだ!私、召集かけるって聞いたときから、もしかしたらマーモンや風さんに会えるかもって思ってきたのに!期待してたのに!
アルコバレーノ居ないって、もう私の楽しみ終わりじゃない!!!!
もう隊長さんがなんでどもってんのかとか、そんなことまったく気にもせず、私はただ絶望した。
すると今度はぞろぞろリアルでマフィアが揃ってきて、部屋の奥のほうへと入ってきた。そしてその筆頭には跳ね馬のディーノ。
ボンゴレ十代目と仲の良さそうな雰囲気で一通り挨拶を済ませた跳ね馬は、「すげえメンツだな」と私たちを見まわす。そうすると当然私とも視線が合う。
パッと目が輝いたと思ったら、跳ね馬はさっさと私の手をとって、大きく握手しだす。
「お前!よかったな無事で。今日ここへ来る途中、恭弥フリーにしちまったから心配だったんだ!」
「え、いや、とくになにもなく・・・っていうか放して」
「なんだよ照れんなっ!水くさいだろ」
いやあなた気付いて。私はいっそどうでもいいのよ。しかしそんな仲良しアピールされると、真後ろのお方の殺気が黒く増すから。
抱かれてる腰が痛ぇぇ。骸さん腕力いまとんでもなくなってますから。怒りで力の加減おかしいことになってます。
「そういえば風チームとマーモンチームが戦った場に居たのでしたね。昨日1日でよくもまあこれだけ…」
放してもらいたいけど、後ろから小さくどす黒い声が聞こえてくるもんだからもう恐怖でしかない。
「ところで跳ね馬。雲雀恭弥がになんですか。まさか彼まで…」
「あなたのせいです、あなたの命狙って私でおびき寄せようとしたんです」
「なんだ、言ってなかったのか。危ないぞ」
「なんであなたはナチュラルに名前呼び捨てにしてんですか」
なんでこうボスという人種は、こうもつっこむのが大変な人ばっかりなの!
まだ召集された内容にまったく触れてないのに、なんでこうも疲れているんだ。もうやだこの人たち。
「俺とお前の仲なんだから」ってニカッ☆と笑う跳ね馬を蹴り飛ばしたくなってきたよ。だから仲良しアピールやめろっつーのに。後ろの殺気が痛いわ。
もうやだ。もうやだ。こんな面倒なことない。これで雲雀がきたらまた面倒だけど、でもそれ以上に面倒なことはない。
すでに帰りたくなって数分、お手洗いかなにか理由をつけてとりあえず骸さんから離れようとして立ちあがったとき、開いていた窓から高速でぶっ飛んでくる天使。
「ーーーー!!!! やっと会えたね!!すっごく会いたかったよ!」
「びゃ、白蘭!!」
うわっ、最っ悪。
もっとも面倒な人きたよ。いたよこれ以上の人。ついにきやがったよ。
立ちあがってフリーになった私を抜け目なく狙ってきやがって、そのまま私をぎゅっと抱きしめる。
もちろんそんな奴には恒例の三叉槍が突き刺さるのだが、そう簡単に当たってくれないのがこの男。くそっ、ホント厄介でしかない。
「10年後の記憶から、今回の代理戦争のときも。ずっと会えなくてずっと寂しかったんだ。初めまして僕のお嫁さんっ」
「「 だれが 」」
すぐに一緒に立ちあがって、私を連れ去られないように抱きしめてくれた骸さんと一緒につっこんじゃったわ。
ってかこの状況、10年後の記憶にもあったぞ。二人ともあのときほどごつい体つきはしてないものの、怪力は健在だ。
大人しくしてるはずもないこの2人に、窓際にいたヴァリアーのみんなが切れはじめる。
ボスのXANXUSは鋼の精神で、こんな状態でも優雅にワインを飲んでいてくれてるけど、「うるせえぞおおお!!」と叫ぶ隊長さんが白蘭につかみかかる。
まあ隊長さんがぶっちゃけ一番うるせえのだけれど。助けてほしいから、じっとしてる。
するともちろん私に抱きついてる白蘭に掴みかかってるから、隊長さんとはさっきより近い距離でまた視線が合って。
その瞬間さっきと同じように、顔を赤く染め思いっきり顔を背けられる。
もちろんそのことに違和感を覚えるのは私だけじゃなく、そしてこの人が黙っているはずもなく。
「S・スクアーロ。なんですか気持ち悪い。僕のをそんな目で見ないでいただきたい」
「なっ! ち、ちげえぞおおお!! 俺はべつにそんな女・・・!」
「ん〜?なんか怪しいなぁ。のことエッチな目で見てるみたい」
「は、はあー!?」
「そういやスクアーロ、おまえのスカートの中見えただろ」
「「「 はあああーーーー!!!?? 」」」
あ、赤くなってた理由ってそれか!!! うわまた思い出したじゃない最悪・・・。
思わず顔を赤くしてしまって。またそれが悪かったのか、その反応をみた面々がまたヒートアップしていく。
「俺は見てねえぞおお!!! だいたい見えたからって、それがなんだっつー話だぁあ!!」
「まあ俺は最上階から落ちるとき、ぎゅっと抱きついててもらって女の子の感触堪能させてもらっちゃってたしな。不可抗力とはいえ、ごめんな!」
「えぇー。それ言ったら僕とだってはたくさんキスしてるし、10年後は結婚してるんだよー」
「おい最後ねつ造やめろ」
白蘭の首を絞めて黙らせる。ってか隊長さんは開き直り全開だし、跳ね馬もぶっちゃけやがったな。なんだ女の子の感触って。
いくら首絞めても息苦しい顔一つしない白蘭を放り捨て、距離を置こうとする。
しかし後ろにいる人にぶつかり、そしてもちろん私のずっと後ろにいてくれた人はこの人なわけで。
寒気を感じて、ゆっくり。ゆーっくり後ろを振り返ると、いつもの最高に恐いほほ笑みをくれるんだ。
「本当にまあ。よくも昨日1日でこれだけ」
さっきと同じセリフを、努めて冷静に言おうとしてるように見える骸さん。
い、いつもより充血具合が増してる・・・。こ、恐すぎる・・・。
半泣きになりながら、震えてなにもできないでいると
私に助け舟を出すように、その瞬間声を張り上げて"今日の召集理由と今後の戦況"を切り出すボンゴレ十代目。
みんな本来の目的を思い出したのか、その声に大人しく従い、ボンゴレの話に耳を傾ける。
(・・・こういうところが、"ボンゴレ")
ボンゴレ十代目ボス。沢田綱吉。
この何を言ってもきかない人々を、その一声で制してしまう。その姿をみて。
昨日初めて会ったばかりだけど。ずっと敵視していた人だったけれど。
少しだけ、信用してもいいのかなと思った。
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油断も隙もない。
2013.07.28