恐ろしい。ホント恐ろしい。なんだこの世界は。
自分がホント小さい世界で過ごしてきたことを実感する。そしてその中で生きてるみんなを改めて尊敬する。
「すんげっ。最上階全部ぶっとばしちまってるし」
ありえねえだろ。
風チームVSマーモンチームの戦いの場にいた私。
戦闘に参加することは諦めて傍観に徹してたが、このフロアに無事でいられる場所がないと聞き、さすがに焦った。
「お前大丈夫か?」
「あ・・ありがとう・・・」
上に伸びるムチを見る。このムチ丈夫すぎるだろ。ヒト2人分の体重支えるとか。さすが一ファミリーのボスの武器。
フロアが吹き飛ぶ直前に、ヴァリアーの隊長の人に外へ突き飛ばされ、一緒に落ちた跳ね馬に抱えられ、現在に至る。
「お前、案外優しいんだな」「うるせえ、そいつは人質だあ゙!」
この2人から"一般人を放っとけるか"のオーラが漂ってて、情けないことに悲しいね。どうせ一般人臭漂ってますよ。
っていうか、一応意識して下を見ないようにしてるけど、ここ高層ホテルの最上階なんだよね。落ちたら死ぬレベルですよね。なんであんたらそんな普通にしてられんだ。腕力どうなってやがる。
足が地に着かない状態のまま、上の爆風が収まるのを待つ。一応支えてももらってるけど、跳ね馬にしがみついてる私の腕はもう限界に近い。
本気で足手まといにしかなってない私が言うのはわがままでしかないけれど、早く上にあがってええええ!
腕が少しがくがくしてきた頃、まだ上に砂煙も舞ってるのに
ヴァリアーの隊長さんが私の足首を急に掴み(・・・え?)、跳ね馬から引き離して上へ放り投げた。(ひぎゃああああああああ!!!!!!!)
絶対死んだと思ってらしくない悲鳴を上げてしまったけれど、無事に元居たフロアに着地・・・てかゴロゴロ転がったけど着きまして。
すごい怖かったけど、ぱっぱとみんなフロアに戻ってきて、落ち着かせる。
ってか!!人の足掴んで放り投げるって!!私一応スカートなんですけど!!色気もなにもないけれど!!いやでも助けてもらっておいて文句言うのもホント・・・。
とりあえずなんにも言えなくて、無意識にスカート押さえて縮こまってたら、隊長さんも空気を読んだみたいで。
「み、見てねえからよ・・・。心配すんなあ゙!」
絶対見えたよこの人・・・。
後ろで爆笑してる跳ね馬がホント恨めしいけど、なんか無駄に空気読まれたことがさらに恥ずかしくてうずくまってた。
あ!ってか戦いは!?ボスウォッチ同士の戦いは!?どうなったの!?
今更ながら一歩遅れて、最上階にいた2人を見る。あ・・・どっちも無事だ。
とそこで全員の腕からアラームが鳴る。今回はこれで終了のようだ。
まあ・・・結局なにもできなかったけど、勉強にはなったかな。うん。じゃなきゃホント来た意味がない。
戦闘が終わったことに安心してほっと息つくも、なんかまだ2チームのボス2人は戦い足りないようで。
え、うそん。これ以上ダメなんじゃなかったっけ。一応尾道さんの説明には私も参加してたからわかるよ。
やっぱりダメなようで、雲雀の腕時計から尾道さんの忠告が聞こえてくる。ほら、やっぱり。ルールは守らなきゃゲーム楽しくないよ。
そういうルールがあるからこそバトルってのは楽しいもんなんじゃないの、ゲームだよゲーム。うんでも風さんの運命がかかってるんだよね。
風さんにはやっぱり恩もあるし負けてほしくないし、そうだよいまあなたがルール破ったりしたら風さんの立場がなくなっちゃうんじゃないの。それはダメ……ってボスウォッチ自分で壊しやがったーー!!
え!? え!? なに考えてんのあの人!
「戦いたい時に戦う」ってそんなあっさりゲーム捨てやがった!風さんの運命投げ捨てた!
みんなが唖然とする中、もうパニックになった私は自分の立場も忘れて、雲雀のとこにズカズカ歩いてく。
「ちょっとアンタ!アンタが放棄したら風さん負けるって意味だよ!?それわかってこんな…」
「・・・・君」
軽く雲雀の胸倉掴んで訴えたら、もちろん面白くなさそうな顔する雲雀だけど。
何かに気付いたように一旦表情が冷静になり、そう呟く。
「六道骸の・・・ところにいたよね」
そう言った顔に、もはや冷静さは一切感じられなかった。あ、どうしよう。この人骸さんときの思い出しちゃった。
激しく怒りを宿すその目に、全身の血の気がひいて、絶対逃げたほうがいいんだけれども。
もちろん手をあげるのも早いこの人にスピードでついてけるはずもなく、振り上げられたトンファーに反射的に目をつぶった。
ガッ
「・・・さすがに女性に手をあげるのはいただけませんね」
私の肩には小さな達人がいて。そこから私へ命中するはずだったトンファーを素手で止めていた。
また・・・風さんに助けられてしまった。
ポンッと風さんが雲雀の肩を押すと、後ろへ大きく吹き飛ばされる雲雀。(!? いま絶対軽く押した感じだったのに!)
さっと私の肩から降りると、また「大丈夫ですか?」とにこやかに心配してくれる。
あ、ありがたいけれど・・・。むしろ私じゃなくて風さんのほうが・・・。
でも風さんは軽く首を横に振ると、「あなたが無事でよかった」とあくまで私を気遣ってくれてる。(風さん・・・)
その間もおもしろくなさそうにしていた雲雀も、ヴァリアーやら跳ね馬やらと話してる。
「六道骸を釣る人質だよ」
「ふざけんなあ!あいつは情報源として、うちが引き取る!」
「おいおい、殺気立つなよ一般の女の子だぞ」
「(一般じゃねえよ一応・・・)」
跳ね馬を睨みながら、連中をうかがい見る。骸さん、あなた敵多すぎです・・・。
きっとこの間も逃げたほうがいいんだけれど、マーモン貸してもらう約束してるし。約束守ってくれんのかな。
じーっとヴァリアーの近くにいたマーモンをみつめる。
「・・・もう一回大きくなった姿にはなれないの?」
「ならないよ」
うん。警戒されてるねこれは。しかしいまの姿もかわいいんだけれど、あのときのが・・・。
しかしならないということはなれるんだろうか。簡単に幻術でできそうだよね。
よくわからないが、結局雲雀は跳ね馬が引き取ることになったらしく、残ったヴァリアーに約束でマーモンを貸してもらってた。
「幻術でなれないの?」
「ならないってば」
「・・・ふーん。なれないのか。骸さんレベルの術師ならできるけど」
「(むっ)・・・できるに決まってるだろ!」ピッカー
「きゃああああかわいいっ!!」ギュー
「Σはっ! ろ、六道骸の名前を出すなんて卑怯だぞ!!」
「案外、仲良さそうじゃねえか」
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アルコバレーノ軍と仲良くさせたかった。ヴェルデはもうメインであるので。
しかし最終戦にも進みたい。
2013.07.23