戦況は理解できた。
今回2日目で風チームは敗退。
できれば風さんの力にもなれたかったけれど、状況が状況だった。仕方ない。
戦闘中跳ね馬の時計も私の時計も鳴らなかったのも、ひとまずリボーンチームやヴェルデチームが生き残っていると考えていい。
そしてマーモンチームは時計の破損は多かったけれど、なんとか無事。
約束通り、小さくなったマーモンを堪能させてもらってから、私は骸さんたちの元へ帰る。
まあすっかり忘れてたよね。

「、おかえりなさい」

目が笑ってない骸さんに出迎えられ、私は泣きそうになった。
うん、まあ今度はとうぜんより丈夫な牢に入れられたよね。そして今度は足枷付きだよね。
そして何より骸さんのソファの真隣ってのが怖いんだけど。(何されるかわからん・・・)
しまった、戦闘終わる前に帰ろうと思ってたのに、マーモンに夢中だった。
作戦の協力者であるヴェルデも骸さんにこってり絞られたようで、私を一瞥するとため息をつく。

「・・・ごめんなさい」
「いや。君が無事でなによりだ」

そう言ってコーヒーを私の分まで淹れてくれてるヴェルデは本当に大人だと思う。
ソファにどかっと骸さんが座り、柵越しに私の腕を掴んで引き寄せる。
「さぁ、何をしていたのか聞きましょうか?買い物に行ってたわけでもない」
もちろん骸さんに握られた腕にはバトラーウォッチ。言い逃れなんてできない。
こ、こんなに怖い骸さん初めて見た・・・。泣きそうっ・・・!
マーモンや風さんに会えたのは嬉しいけれど戦闘には参加できなかったし、抜け出すなんて馬鹿な真似しなきゃよかったと思うころ
『虹の代理戦争2日目ご苦労だった』
骸さんが掴む私の腕から人の声。チェッカーフェイスだ。
その声によって若干骸さんの注意がそっちへ逸れて、助かったと思うのも束の間。
ウォッチから映し出された"彼ら"の姿に身を凍らせる。

「復讐者(ヴィンディチェ)!!?」
「っ!! ヴェルデ、骸さんにその映像見せないで!!」

言っても遅く、自分のや骸さんのボスウォッチを押さえても、骸さんは"彼ら"を見てしまった。
骸さんだけじゃなく、この黒曜の制服を着ているこの場の全員の息を呑む音がした。
動揺を隠せないまま、チェッカーフェイスの『健闘を祈る』という声を最後に映像は途切れた。


沈黙。誰も動けなかった。
だけど数秒してすぐに骸さんは立ち上がり、私へ寄る。

「とにかく、このバトラーウォッチは回収します」
「あっ・・・」

私の腕からバトラーウォッチを外して、ヴェルデへ渡した骸さん。
骸さんはそのまま部屋のドアへ向かうと、作戦会議だとみんなを連れていってしまった。







*








数時間後。いや、数分後かもしれない。時計を失った私に正確な時間を知る手段はなくなっていた。
電気はつけっぱなしだったものの人がいなくなって寂しさが漂うこの部屋に、私以外の気配がきた。
「・・・骸さん」
少し神妙な顔つきをしている骸さん。
骸さんはさっきみたいにどかっとソファへ腰を下ろして、私の手を掴んで牢から引っ張りだした。
幻術を解いたのは牢だけで、足枷はそのままだったけど。柵へ寄りかかっていた私は簡単に骸さんに操られ、ソファへ骸さんへ倒れこんだ。
「は何も心配しないでください」
ぼそりと呟く声に反応が遅れて聞き返すが、骸さんはパッと私を起き上がらせ、
「さて、今日のの一日を聞きましょうか」
なんて何事もなかったかのように、帰ってきたときと同じ目が笑ってない笑顔で言うんだ。(骸さん・・・)
気にはなったけれど、骸さんのいうことを大人しくきいて、私は今日のことを順番に話していった。


「マーモンチームと風チームが戦っているところに居ました」
「ほう、それはまたなぜ」
「・・・戦闘に参加するつもりで」
「なにかできたんですか?」
「・・・なにも」
「そう。ケガはありませんでしたか」
「はい、風さんに・・・あと跳ね馬に助けられました」
「風に、跳ね馬…ですか」
「・・?」


一つ一つ骸さんは話をきいてくれて。私の悪いところは叱って、でも心配もしてくれてたのが伝わった。
本当に骸さんは優しい。そんなに、甘やかさないでほしいのに。その優しさに、いつも折れてしまう。
今回もあれほど『役に立ちたい』と奮起して出た作戦だったのに、もう申し訳ないと反省してしまってる。

思わず顔を俯かせてると、急にギュッと抱きしめられる。
あまり距離自体は変わっていないけれど、その温もりに包まれると、やっぱり落ち着く。
「、貴女は僕のです」
「・・・はい、私は骸さんのものです」
もう遠の昔からわかっていること。あのとき救われたこの命は、貴方のもの。
そんな私が貴方の言いつけ守れないのはいけないことだけれど、私は貴方のためにこの命使いたい。観賞人形じゃ嫌なんです。
骸さんの背中へそっと抱きしめ返すと、呟く骸さんの声。



「誰にも渡しません・・・っ」



少し力んだように聞こえたのは気のせいかな。だって、私は骸さんのものだもの。そんなのわかってる。
なにも不安になるようなこと、力ませることなんてないもの。

幻術によって付けられた足枷が、少しきつくなったように感じた。

















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骸さんはどんどん束縛してほしい。束縛してなきゃ、ここのメンツ危ないよ!←




2012.06.23