よかった。僕の戦闘許可が間に合って。
風の攻撃を危ないところで防いで、ボスの側へ寄る。
いまのでスクアーロのは壊されてしまったけれど、僕が参加してこれで2対2。
ベルを払いのけると、物陰から気配が飛び出してきた。
気配の隠し方もわからないようなさっきの一般人の女に、みんなが気づく。
しかしその女は飛び出してからまっすぐ走って、・・・僕のほうにくる。
「もうっ、我慢できないー!!!」
「 !?? 」
その女は僕に抱きつくと、ギュウウと締め付け頬ずりしてくる。それはもう嬉しそうに。
な、なんなんだこの女は!突然出てきていつの間にか消えたかと思えば、また突然出て!
戦闘の邪魔をするどころか、これじゃあ身動き一つとれない!まったくわけがわからない!!
「は、放せ!誰だっ」
「カワイイぃぃぃ・・・っ!」
「か、可愛い!?」
力で離れようとしても、僕にべったりくっついたそいつは離れそうもない。
もう幻術使って力ずくで離そうとすると目の前のスクアーロが、僕になにか合図しているのに気づく。
自分の隊服を引っ張ってその女をアゴで指すスクアーロに習って、僕も視線を移す。
女の服を見ると、見覚えが。
(そうか。この女、六道骸のところの…)
よく見ると腕にもバトラーウォッチがついてる。これがバトラー?ヴェルデのところは随分腕時計を余らせてるみたいだね。
敵とわかれば話は早い。隙だらけなのが少し気になるけれど、狙ってくれといわんばかりの獲物を逃す理由はない。
さっさと破壊して邪魔者は退場してもらおう。それから風を倒す。
だけど僕がその女の腕に手を伸ばす途中で、スクアーロが僕とその女を引き離す。
そのことで僕とその女の距離は開かれ、腕時計に手は届かなかった。
「あとでマーモン貸してやるから」
「なっ、勝手に決めないでよ」
僕が離れたことで不満げだった女に言い聞かせてた、スクアーロの聞き捨てならない一言につっこむ。
っていうか、なんでスクアーロがわざわざ出てくる必要があるのさ。こんな女、一瞬で消せるのに。
スクアーロは女の背を押し、避難する寸前に僕に耳打ちをする。
「今の所、ヴェルデチームが有利だ。情報だのなんだの聞きだし、人質にでもすりゃいい」
それもそうかもしれないけど。
少々腑におちないところもあったけれど、僕の不満を聞く前にスクアーロは女を連れていってしまった。
女は有効に使えるかもしれないけれど、この状況は面白くない。
ちらりと女を見る。
すると、女は振り返り、僕と視線が合う。
その瞬間、また嬉しそうにその女が笑うものだから。僕は慌てて視線を離した。
「(・・・女に恐怖心を抱いたのは初めてだ)」
タダで終わりそうもないこの代理戦争。
寒気のする肩を少し擦って、風たちと向き合った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
恋の相手は風か、マーモンか。はたまた恋ではないのか。
代理戦争中の黒曜に注目。
2012.06.21