小奇麗なところは 落ち着かない。
そりゃ記憶が曖昧なころの育ちはいいほうだとは思うが、
物心ついてはっきりしはじめてからは、正直いい暮らしはしていない。
ここのところの拠点は黒曜ヘルシーランドだし、瓦礫に慣れてしまっているのだ。
そのせいだろうか、こうした管理が行き届いた"高級ホテル"などには慣れない。

骸さんたちがユニチームを狙って出かけてから数時間。
昨日の戦いで敗れ、私の見張り係となってるM.Mを薬で眠らせ。
協力者であるヴェルデにユニチームの居所を聞いてから、私は出かけた。
計画通り牢から出て、ヴェルデからバトラーウォッチを受け取った私は、骸さんたちの出かけた方向と反対方向へと向かう。

まず、この脱出計画は骸さんに知られてはいけない。知られたら何をされるかわからない。
勝手にこんなことして、タダで済むはずがない。
だから、今回この代理戦争に参加はできても"骸さんたちと共闘はできない"のだ。
見つからないよう、べつのチームが殺りあってるところの漁夫の利を狙うしかない。
ヴェルデの情報によればリボーンチームはユニチームとコロネロチームと同盟を組んでいる。まず不利だ。そしてそこには骸さんたちもいる。
風チームはどっかほっつき歩いてるらしいし、スカルチームは私にとって未知の敵。
私は、場所が明確にわかってるマーモンチームのヴァリアー狙いだ。


そんなわけでこのホテルに至る。
至ったのはいいが、最上階着いてエレベーターが開いたと思ったらなんだこれ。
雲雀恭弥が戦ってると思ったら、次々投げ出されたヴァリアー幹部の人たち。(あ、オカマの人…)
なにがなんだかわからないまま、遠目で様子を見守ってるがよく見えない。
しばらくするとヴァリアーのボスであるXANXUSまで出てきてなにか小さい子が喋ってるのも聞こえる。
もう少しよく見ようと、その連中に近づいてった瞬間消える連中。

(…え?)

ヒュッと音がしたと思ったら、爆音が轟く。
気づくと一瞬で私の景色は変わっていて、私が居たであろう窓際は吹き飛ばされていた。
え、なんで。いや、早いです。いや、意味わかんないです。っていうか私・・・?
頭は自信あったけど、状況展開が速すぎてついていけない。そんな私の頭上から穏やかな男性の声。



「大丈夫ですか?」

「え?・・・・雲雀恭弥?」



え?だよね。雲雀?なんでアナタ拳法服でコスプレしてるの。
自分のつっこみ力を褒めてやりたい、こんなときでもつっこみは明確だ。
まあ訳わかんない状況は変わってないのですが。
雲雀を見つめていると、雲雀はくすっと優しく笑い(どきっ…)私を庇うように前へ立つ。

「危ないですから避難しててくださいね」

え、いや、アナタ、本当どうしちゃったの。そんなキャラじゃなかったじゃない。
骸さんにボコボコにされたショックで性格変っちゃった…?なんてことだ。
もう完璧アウェーな状況で一人取り残される。すると、雲雀の横に・・・え、もう一人雲雀?あれ?
眉間にシワが寄るのが自分でもわかる。ついでにもっとアウェーになったのも若干感じた。

4人のバトルが再び始まる。
(あ、そうだ。私この戦いに参加するためにきたのに)
完全に。私なんかの入る間もない。ダメだ。今ここに入ったら確実に死ぬ。
しかし悲しくも影が薄い私の腕にバトラーウォッチがついてるとは、この場の誰も思っていない。
戦闘に茶々を入れるタイミングを狙って、よく観察する。

すると、急に背後から腕を引っ張られる。
『やられた』と思ったときには遅く、壁の陰に連れられ口押さえられた。
「バカッ、危ねぇだろいつまでそこに居るんだよ!」
物陰に完全に隠れた瞬間、身体を反転させられその顔を見ると金髪。

「あれ、お前どっかで見たこと…」
「(キャバッローネのディーノ・・・!)」

口を押さえられたまま、その男の正体に驚く。なんでこんなところに・・・!
苦しくて彼の腕を叩くと、「あ、悪ィ」と一言付け加えてからゆっくり放された。
顔を見られるのはマズイと思って、戦闘中の人たちに興味があるフリをして跳ね馬から顔を背けた。

さっきほど油断していないおかげで、動体視力が働いて戦いの風景が見えるようになった。
すると、やっぱり雲雀が2人。だけどどう見ても一人は本物で、一人は拳法コスプレの微笑みレア雲雀だ。
戦いの最中。それもこんな命がけのバトルだというのに、そのレア雲雀は楽しそうに笑う。
私の上から覗き込むようにバトルを見る跳ね馬が、解説するように言う。
「あれは風。アルコバレーノの一人だ。恭弥にそっくりだろ」
私に正体を教えてくれるということは、私の正体もバレたかな。一般人じゃ教えないだろうし。
まあ黒曜の制服着てるからしょうがないと自分のことは諦め、風さんとやらを見つめる。

華麗に応戦しながら微笑む。その余裕の表情に、なぜか視線が離せない。
(そういえばさっきは・・・助けてくれたんだよね)
よくわからない気持ちでいると、構えていた風さんから放たれる龍の光。

―――ッ
「・・・・?」

それと同時に聞こえる"何か"。
天上に上がったと思った風さんは、突如全身から血を噴出し倒れる。
起き上がった風さんは自嘲したように微笑みながら、黒い影を見つめる。
その影を見た瞬間、私は今まで感じたことのない衝撃を全身で感じる。


「勝利を疑った者は、自爆する」














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つ づ く。
やっと代理戦争に参加するの巻き。いや参加できてないけど←




2012.06.20