暗い暗いリビング。もうすでにみんな寝静まって、誰もいない。
相変わらず"鳥かご"に閉じ込められた私は、自分の部屋へも帰られないままその場へ居た。
私も眠ろうとしたが、やけに目が覚めている。
寝ることを諦めて柵へよりかかって楽にしていると、部屋のドアが開く。
わずかな月明かりを頼りに目を凝らしてドアの前のシルエットを見ると、小さな丸い…
「・・・カメ?」
「誰がだ」
渋いながら幼さが残る声で正体を確信した。なんだ、ヴェルデか。
ヴェルデはその小さな身体で、大きな頭の上に毛布を乗せて歩いてくる。まるで甲羅のように。
カメは私の元までたどり着くと、柵をうまくすり抜けて毛布を私に渡した。
「・・・ありがとう」
「骸君はフランに付き合っている」
柵越しに毛布を私にかける手伝いをするヴェルデは、骸さんに頼まれたそう。
『もそろそろ眠りにつくころですね。それでは僕はと添い寝するので…』
『なに言ってんですか師匠、夜這いなんてやめてくださいよ』
「…と、フランに足止めされてたのでな」
ありそうだわ。フランの辺りがとくに。
毛布をかけ終えて、また体勢を楽にする。
体勢を楽にしても目を閉じようとしない私を見て「…眠らないのか?」とヴェルデが言うから、
少し眠気がきてたけど、静かに頷いた。寝る気にはなれない。
すると、柵に寄りかかってた背中にポテッと小さな重み。
首だけ振り返ると、月光が射す自分の後ろの小さな影は、甲羅の脱げたさっきのカメだった。
とくに気にせず、そのまま同じ体勢でいた。
もう寝ぼけ眼の私でも、考えることはずっと同じ。
それを考えてるから、眠くても眠られない。
ヴェルデに一声かけて彼が起きていることを確認してから、話す。
視線の先には、ヴェルデの鍵がかけられたトランクケース。
「相談があるのですが」
「なんだね」
「そこの白い腕時計取ってもらえませんかね」
「取ったところでどうする。この牢からどう出る」
「出られる」
「・・・詳しく話を聞いてから、考えよう」
まるで私の言うことがわかってたかのように、ヴェルデは私をさらりとかわす。
だけど、私がもう一度
「・・・出られるわ。このぐらい」
眠いなりに力強く言うと、ヴェルデは私を訝しげに見つめる。
やっと相手にしてくれたヴェルデに、私は計画を話した。
「絶対に無事に帰ってこい。それが最低条件だ」
「わかってるわ、帰ったらも約束あるし。ありがとう」
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企む。ヴェルデを引き込んで、動きます。
こ、黒曜じゃなくなるのは次回かな。いや、もう1話またあるかも←
タイトルは結局大人な2人。仲直りシーン。
2012.06.19