綺麗なくらい田舎町。
空気が澄んで、空が青くて、辺り一面真緑で。
そんなところへなにしにきてるかというと、勢力強化のためである。
未来で一緒に戦った"仲間"を迎えに行くのだ。
情報収集してるうちに行き着いた川の上流。
少しひらけた場所は、まるで湖。
「。少し2人でデートでもしてきましょうか」
「そうですね。リンゴでも食べながらフランもいれてみんなで」
この人いつもいつも本来の目的を忘れてるんじゃないか。
いい加減めんどくさくなってきて千種のほうへ寄る。
するともちろん今まで側にいた骸さんは面白くなさそうにまた私へ寄ろうとするのだが、
そそくさに間へ入ってきたM.Mが骸さんの腕に巻きついたため、骸さんの進行は阻まれた。
「フラン、元気でやってるかな」
「さあ。フランが元気ってあんまり想像できないけど」
たしかにと苦笑する。
そう。私たちはフランを迎えにきたのだった。
情報を探りに探ってやっと着いたこのフランスの秘境。
しかし秘境も秘境。先進国のこのフランスにこんな綺麗に自然が残ってるなんて知らなかった。
ここまでくるのだって一苦労。人気が少なくなるのと一緒に道の荒れも目立ってきて
さらに進むと大滝。細く勢いのある滝は、下の岩場を削りまた川となって流れている。
いまだってこんな岩道を歩いて、身長高くて足長い骸さんと千種はいいけど(あとジャンプしまくる犬)
私とかM.Mなんて歩くというより"登る"という表現のほうがあってる。
「、手。大丈夫?」
「あ、ありがと千種」
「骸ちゃ〜ん!私もひっぱってーv」
「仕方ないですね。(ひょい)あとは大丈夫でしょうから自分で歩いてくださいね」
「っ!お前ら、ちゃんと自分で歩けびょん!」
先頭で突っ走ってた犬が振り返りM.Mに怒鳴ると
チラッと千種を睨んでから前へ戻る。(お前らって・・・私だよな)
少し疑問に思っていると、横で千種がため息をつく。
しかしここホント大変だな・・・。子どものフランがこんなとこ通ってるとは思えないんですけど。
私の記憶にあるフランはボッキボキの術師だったのに、もしかして子どものころはムキムキだったとか!?
(・・・・んなわけあるか)
自分でつっこんで気持ち悪い想像を消した。
歩く先の道が開けてきたと思ったら、ようやく先ほどからチラチラと見えていた湖に出る。
ここらへんにフラン居るってきいたけど・・・。疲れた。
『普通のガキならぜってー来れねえな』
「子どものくせに、昔からフランは変わりものだったようね」
『やっぱフランは普通じゃなくてアホってことだろ?』
「まったくだびょん」
「「「 ・・・・・・・・あ!? 」」」
少し遠くから聞こえた声に、思わず犬と2人で答えると
「ヴァリアー!!」
骸さんにそう呼ばれた人たち。ヴァリアーってたしか、ボンゴレの。
なんでまたそのヴァリアーがここにと一瞬考えたが、すぐに"同じ目的のライバル"だと勘付いた。
どうやら当たりなようで、金髪の彼が「お、あれじゃね?」と人影を指す。
「今日はなにしてグレようかなー」
え、ちょ何言ってんのあの子。
私たちの視線の先には、湖の石の上に乗っかったリンゴ・・・の被り物を被った少年。
そんな彼の姿を見て、みんな一言。
「バカだびょん」
「バカな子です」
「バカすぎない?」
「(・・・可哀相にフラン)」
あなたたち、あの子を迎えにきたんでしょう。もうちょっと暖かい心で歓迎してあげようや。
まあどうでもいいから大人しく様子見守ってるけど。
すると、急にチャポンッと湖に身を投げいれ流れていくリンゴ・・・頭の少年。
・・・いや流されちゃうよ!?
途端に心配になって追いかけようとすると、私を止める骸さん。
見てると、やっと気配を感じたのか。私たちのほうへ振り向くリンゴの頭。
「んー?」
「まんまガキのフランだ!!」
その顔には見覚えがあり、間違いなくフランだと確信した。
無事会えた喜びからか、やっと見つけた喜びからか自然と笑顔になる私。
「やべ、妖精見える」
・・・・・・・・ん?いまあの子なんつった?
笑顔が石化した私。みんな唖然とフランを見つめる。
そうすると何を思ったのか、フランが奇妙な踊りでこっちを見つめかえす。(フランなにやってんのー!?)
みんながざわめく中、一人余裕の表情で前へ一歩出る骸さん。
「フラン、僕です!!わかりますね、お前の師匠です!!」
お、おぉー・・・。ちょっとこんな気合の入った骸さん珍しいぞ。
後ろでそう感心、そしてちょっとしたときめきを感じている私。
ちょっと遅れてフランを見つめると、フランの表情は不安そうな…
「こんな山の中に パイナップルの精が」
な…
なんてこと言うのおおおおお!!!
ちょ、いままた確信したわ。あれフランだ、まごうことなきフランだあの口!!
私たちががくがくと青ざめてる間にヴァリアーもその口にやられたのか、もはや正気の人はこの場にいない。
「骸様…落ち着かれた方が…殺したら元も子もない…」
「放しなさい千種、私も若いのです」
過ちを若さのせいにしちゃならん骸さん!
冷静に骸さんを抑えてくれてる千種に心底感謝した。私も素早くフォローとして前から骸さんを押さえる。
しかしヴァリアーの連中はそう治まってるような人たちばっかりじゃなく、
うまく犬が珍しく落ち着いてフランに優しく話しかけているというのに
「少し落ち着けって、オレらは味方だびょん」
「びょんとかいい顔で言えるのはバカだからだ!」
「Σんあ゙!!」
もうイヤあの子・・・。
とか、ほらそう言ってるうちにみんなに怒られて、危機的状況に陥ってんじゃないのまったくフランは。
傍観していただけだけど少しため息をついてからみんなの下へ湖に足を入れる。
みんなに囲まれるとフランは観念したのか、次から次へと『褒めちぎり作戦』に出る。
「メガネの精さんも肌の質感がすごいなー。消しゴムみたいですー」
「ぷっ…(消しゴム・・メガネの精・・)」
「」
「ゴメンナサイ」
いや、さすがに次に言われた骸さんへの"褒め言葉"は笑えなかったよ。
もう内心ひやひやしてるこっちの身にもなってくれと、心の中で願ってるとフランと目が会う。(ん?)
目が会ったその瞬間「うわあ…」と驚いたように見つめられて、
少々困っていると当然周りのみんなの視線も私にきて、照れくさい。
耐えかねて、気持ち首を傾げると
「お姉さんは・・・すっごい美人ですね」
目を大きく見開かれ、ストレートな一言。
その言葉に今度はこっちが目ひん剥くほど大きく開いて驚くのだが、リンゴ頭に刺さる三叉槍。
「出会い頭に目をつけるとは・・・殺しますよおチビさん」
「骸様落ち着いて…」
そう言う千種もどこか目が忙しない。
私はというと、言葉がストレートすぎて真正面から受け止めてしまったので、いま恥ずかしくてしょうがないのだ。
さっきの照れくささなんて比にならないくらい。顔が火照ってる。
いやいやいや、相手はフランだし。・・・いやフランだからか?普段はあんなこと言うような人じゃないからギャップで?
いやしかし待てよ。と、頭の中がすでに混乱している。
とりあえず「あ、ありがとう・・・」とだけ言ったけど、それでもまだ見つめられてる。え、ちょ、いつもの生意気な口はどうした。
フランの様子を見かねたヴァリアーの隊長さんがフランに問うと、どうやらフランは『記憶喪失』なよう。
納得がいくと、今度はフランを押し付けあう我らがボスたち。アミダくじまで出して・・・。
本当最後までフランの扱いはなんだったのやらと思うと、チラッと見たフランとまた目が会う。
すると今度はニコッと屈託のない、あまり見られない笑顔で微笑んで、私になにか合図を出すフラン。
それが私にはよくわからないまま、フランはみんなのもとへ行ってこう切り出した。
「なんか面白そーな話ですねー、ミーが決めてもいいですかー?」
誰の人の意見も聞かないで私たちのほうに指さすと、私たちに駆け寄って…
「こっちの集団についていきますー」
私に抱きついてきたフラン。(!??)
わけもわからず大人しくしていると、私を見上げてまた屈託のない笑顔で私に笑いかけるフラン。
「どっちもよくわからない集団なら、お姉さんが居るほうがいいですー」
どきっとしていると、天高く舞い上がるフラン。私の近くには骸さん、犬、千種の3人。
「殺しますよおチビさん!!」
「こっちくんじゃねーびょん!にさわんな!!」
「大人しくヴァリアーに行きな」
「じゃ、オレたちはこれで」
「Σあ!ちょっと待ちなさいよヴァリアー!」
放り投げられてたフランは湖へバシャンッ。
派手に打ちつけたんじゃないかと心配になって追うと、見事に真っ赤で。
さすがに痛そうであやすように話しかけると、途端に涙目になるフラン。
「お姉さん、痛いですあの人たちヴァイオレンスです」ぎゅっ
「おまっ、またに…!」
「おチビさん、今すぐを放さないと串刺しにしますよ」
「もういいから帰りましょうや」
こうして私たちは仲間にフランを獲得しました。
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フランと出会う。
黒曜大好きすぎです。
2012.04.04