「・・・ユーリ、ダメだよそんな」
隣りで泣いているは、苦しそうに言う。
私はそんなに微笑みながら、その震える頭を撫でる。
「そんなに苦しいか?」
「苦しいよ。もう・・・ダメ」
あふれる涙を無理に抑えようとするは余計に苦しそうだ。
その抑える手を私は握り、片手で掬うようにの涙を拭う。
「あまり強く押さえると、痕になってしまうぞ」
そう言えば、は自分の口を強くむすび言い訳をする子どものように言う。
「だってこんな…」
「こんな悲しい詩で泣かないなんてムリ・・・」
さきほどまで私が書いていた、出来たばかりの詩を読み終えたはひたすら泣き続けている。
そんなにも悲しい詩を書いてしまったか。私も罪作りだな。
しかし、いい加減泣きやんでほしいのだが・・・。どうしたものか。
の泣き顔を見ながら考えていれば
(・・・実に綺麗だ。こんなにも美しいものだったか)
ふと、の泣き顔に魅入る。
読んでいる途中から泣き始めただが
最初はグスグスと泣き散し、今は落ち着いたのか
静かにまた流れる涙を拭く。
その姿はまるで慈愛に満ちた女神が、ひどく悲しんでいるようだった。
「(・・・まぁ、その通りなのだが)」
しかし女神というには、彼女はまだ幼い。それにやんちゃである。
まだ見習いである目の前の女神を見て、そっとその髪に口づけをおとす。
は顔を上げ、私に抱きつき「ユーリは悲恋の天才だぁ〜」という。
私はの頭を撫で、彼女が完全に油断しきったところで、その首に噛みつく。
「!?」
「いい加減、泣きやんでもらおうか」
「いきなり噛みつかなくても!」
さっきまで泣いていた名残か、涙目で私に訴える。
しかしこれで泣きやんだだろう?
そう笑って言えば、はなにか面白くなさそうな顔で口を尖らせる。
「血まで吸うことないのに・・・」
「仕事を終えた私に、ご褒美はないのか?」
そう問うとは首をかしげ、少し考える素振りを見せてからニヤリと笑う。
「もっと、いいこと してあげる」