ドドドドドドドド
バンッ
主にヴァリアー幹部とボスが集まる、特別茶室。
その出入り口として使用されるドアは、廊下から全力疾走してきた者によって
破壊されるような大きな音を立てて開けられた。
部屋に居た幹部たちは何事かと、ボスは睨むようにその人物を見た。
開けた本人は息を切らし、一言。
「た、たすけて・・!!」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
「どうしたんだい?」
少しの静寂のあと、部屋に居た幹部の1人“マーモン”は彼女に問う。
「い、いいいいいから助けて、かくまって!!」
「ゔお゙お゙い、テメー煩ェぞ!」
バン
ボスのザンザスが投げた書類に「痛ェェ!!」と嘆く当たった本人、幹部スクアーロ。
ボスは「テメーが煩ェ」と一蹴し、また投げる。
そして冷静に、幹部ゴーラ・モスカの後ろに隠れてる同じく幹部のを見る。
「どうした」
「べべべ、ベル!ベルがおかしい!!」
「は?」
声を上げたのはマーモン。しかし心では誰もが思っていた。
『アイツがおかしいのはいつものことだ』と言いたげに。
「おい、今更何言ってんだァ?」
「いいから黙って匿れっつーんだよバカザメ!」
「誰がバカだぁぁぁ!!」
「煩ェカス」
3度目の書類投げ。流石にスクアーロもキレてボスに襲いかかるが
空になったワイン瓶を投げられ、出血でダウン。近くに居たメイドが彼の傷の手当をする。
と、また部屋の外から別のメイドが来た。
「様!ベルフェゴール様が参りました!」
「ぎゃぁぁ!もう何も言わず、ベル来たら『は居ない』って言って!!」
「事情を説明しろ事情をぉ!」
「黙れカスが」
復活したスクアーロにまたもや書類投げ。
はモスカの後ろに隠れ、気配を消したと同時にドアが開いた。
とりあえず、の言う通りにする一同。
「ー・・・って居ないのか」
「あ、あぁ・・」
「(バカザメ!バレるような行動取るな!!)」
「残念ながら居ないよ。ベルが来るって聞いて即行っちゃった」
「(マーモンさすがっ!)(グッ)」
「んじゃ、まだ近いとこに居っかな。んじゃね」
ドアを開け、また出て行ったベルフェゴール。
部屋に静寂が流れ始めた。
「「「「・・・・・・・」」」」
「もういいんじゃないかしら」
「どうもありがとう・・・」
また幹部の1人ルッスーリアがそう言い、がモスカから出てきた。
出てきた瞬間、ボスが「何があった」と直球に訊く。
「なんか最近変なのよね。前はからかうみたいに嫌がらせしてきてたけど…」
「けど?」
「ただエスカレートしただけと思ったんだけど、違うらしくて…」
顎に手を沿え、考える素振りを見せる。
スクアーロやボスは、この歯切れが悪い話にキレかけていた。
はその様子に気付いたのか、焦って言い出そうとする。
「あーうん。なんか本気みたい」
「本気?」
「前は襲えばいいみたいな感じだったけど、今はすっごい束縛してくんだよね」
「・・・・・本気って、ベルちゃんがに惚れたってことかしら?」
「多分」
「「「「・・・・・・・」」」」
再び静寂が流れる部屋。
スクアーロは今だ解せず、呆けている。
そしては主に哀れみの視線を受けている。
「ご愁傷様、」
「合掌しないで助けて、マーモン」
「高いよ?」
「無償で助けてくれたっていいじゃない・・!」
「・・・ま、安くはしてあげるよ」
「・・フン」
「ボス、マーモンになんか言ってやってよー。ついでにベルにも」
「勝手にくっつきゃいいだろうが」
「ひど、それ見捨ててるね」
とは言いつつ、彼らも彼女との仲は短いものでもないしボスに至っては幼馴染だ。
長い付き合いの友人には、恋愛感情がなくとも幸せになってほしいと思う。
それをいい加減な彼に渡すどころか、を見捨てるなんてとんでもない。
興味ないような態度を見せるが、これでも心では真剣に良い案を考えている。
「ま、良い案なんてないんじゃないかしら」
「ひっど!」
「はっきり言えやいいだろうがよぉ」
「そんなんでベルが引くなら、とっくにやってる」
「確かにね。ベルは欲しいと思ったものはみんな手に入れるし」
「大変なやつに好かれたな」
「レヴィに好かれるよりはマシよ、多分ね」
明らかに落ち込んでいるレヴィ。この2人は相変わらず仲だ。
「でもそれじゃあどうするんだい?」とマーモンが言った途端、
はマーモンの手をすがるように握り、目を輝かせて言った。
「だから!幻術でニセの私を作って、ベルの相手させて、ベルを可哀相な子にすればいいの!」
「「「「・・・・・・・」」」」
いくらなんでも無理があるだろう、と思う一同。
というかそれでいいのか?ニセの自分でいいのか?一応自分なんだぞ?
そもそもマーモンの幻術といえど、ベルフェゴールも立派なヴァリアーの幹部。
幻術でまったく気付かないほど鈍くはないだろう。
大体そうなれば、長時間幻術を掛けることになるだろう。
あのマーモンに頼むんだぞ?
安くするといっても莫大な金が掛かるだろう。
と、一同が呆れてる中、ドアが開く。
「大丈夫。オレ、別に可哀相になる予定ないし」
「べ、ベル・・!」
「だってオレ、王子だもん」
お決まりのセリフを言うベル。
彼はこの部屋から去ってしまったあとでも、この近くを探してたそうな。
なので、ここの部屋での会話も聞こえたそうで。
「ってか、誰も大声で喋ってないよね?なんで聞こえんの」
「の声ならどこだって聞こえるし」
「ちょっとお前死ねや」
「ストレートに言ったね、」
マーモンが言い、ベルは「照れ隠しだもんな?」と答える。
彼女本人は怯えたように首を横に振る。
ベルが一歩一歩に近づくと、はマーモンを盾にするように持ち抱え、後ずさりする。
「ちょっと、離してよ」
「助けて助けて、お金一杯払うから体払いでもいいから」
「王子に身体ちょうだいよ」
「その王子から逃れるためにマーモンに払うっつってんのよ・・!」
普段の冷静な、不適な笑みを浮かべているが血相を変えるほど怯えている。
よっぽど追い回されたのだろう、全身拒否というようにマーモンを強く抱きしめる。
「昨日はあんな淫らで素直だったのになぁ?」
「死ねよ死ねよ、それ以上言うんじゃねぇぞ」
「っつかマゾだったろ?あんなイジメてんのに喜んじゃって…」
ギュンッ
の怒りが限界に達したのか、懐から銃を出しベルに向かって撃つ。
もちろん、頬にギリギリ当たらない辺りで撃ったのだが。
「それ以上言ったら、本当に殺すわよ。もしくはヴィンディチェの牢獄に入れるよ」
「お~コワ。ハイハイ言わないから銃下げなよ。ついでにマーモンも」
「マーモンは離さない」
「邪魔なんだよね」
「だから持ってんでしょうが」
「ねぇ、好い迷惑なんだけどホント。僕関係ないんだから離してよ」
確かに関係のないマーモンにとっては好い迷惑だが、
はそれ以上にベルを迷惑がっていた。というより怯えていた。
それをわかっているから、マーモンは無理にの腕から逃れようとしない。それは皆の優しさか。
と、一瞬は思ったが、空気の読めない男が…
「・・・ベル!貴様、を抱いたのかァァ!!」
「言うんじゃねぇよカスザメがぁぁぁ!!!」
バッコーン!!
と、スクアーロに向かってマーモンを投げた。
見事にスクアーロの顎にヒットし、倒れる2人。
その瞬間に気づく投げた本人。周りからは「やっちまった」の視線。
「ふーん。そうゆうこと、」
「ごごご、・・め・・!」
「もうどうなっても知らないから」
マーモンはそう言うと、パッと瞬間移動して消えてしまった。
もちろん今まで盾にしていたものが消えてしまったのだから…
「やっとつーかまえたっ」
「ひぃぃ!!」
あっけなく捕まってしまった。隙のあった後ろからベルに抱きしめられ、頬ずりされる。
周りの者も、もちろんまだ良い案なんて思いついてないので黙ってその場を見守る。
いや、ボスに至ってはもうどうでも良さ気にワインを飲んでいる。
完全に周りから見捨てられたと思った。
しかし、やっぱりここでも空気の読めない男が…
「ベル!テメーがいくらを好きだろうと、は譲らねぇぇ!!」
「テメーホント学習しねぇなバカがぁぁ!!」
ドンッ
と、今度はベルを背負い投げしてスクアーロにぶつけた。
Σはっ!あたしってばチャンス!
はすぐにそんな顔になり、「アデュー!」と言い残してその場から走り出す。
そしてすぐに「オレから逃げられるとでも思ってんの」と、倒れていたはずのベルも走り出す。
壁に叩きつけられた哀れなスクアーロ。呆然とする幹部たち。
実はこっそり、良い案はないかとまだ考えてたボス。
果たして彼らはを助けられるのか?が自力で撒くのか?
それともベルの思惑通り、虜になってしまうのか・・?
未来はどうなるかわからない。
「まだそんな動けるか。じゃあ今夜は動けなくなるまで可愛がってやるよ」
「結構です!!」
リアル鬼ごっこ
2007.11.15...write
2008.02.29...up
(つい最近、リアル鬼ごっこしてた夢見ました)