わたしたちを救った貴方に栄光あれ!




『汚れているからこそ美しい』


今でも
貴方のその言葉を信じています。




元々、私は裏社会の人間ではあったがマフィアには一切関係なかった。
いや、本当は裏社会の人間でもなかった。
普通にイタリアで育てられ、並の生活にたくさんの親からの愛情をもらってた。
そう、並の生活ではあったが裕福だった。環境がとてもよく、自分でもわかるほど多くの人に愛された。

でも5歳のある日、私は親に売られた。
買い手はただの人買いではなく、人売りだった。
つまりまた売られ、返品か捨てられてもまた引き取られるを繰り返すんだ。

私は一生奴隷の人生に置かれてしまった。


私が行ったそこには、その売買所で売り物になった人たちの『養育所』があった。
私は一年間そこに居て『奴隷』としての勉強をしていたから、売り出されたのは6歳の時だった。

最初の人買いは最悪だった。
ロリコンとかなんたらで、そんな小さな幼女を性欲道具に使った。
苦しかった、嫌だった。
もう精神はズタボロだった。
そんな状態でその男の契約期限がすぎた。

やっと解放された私は、目に光がなかった。
人売りは私のその状態に気付き、次に私を売った場所は

命懸けの人体実験所。



千種や犬と逢ったのはそこ。
まだ何も知らない私たちは楽しかった。
同年代の子たちと遊んで、笑いあって、じゃれあって。
人売りに買われてからはこんなこと全く想像してなかった。
みんなとすぐに仲良くなれて私は幸せだった。光を取り戻せた。

その数時間後、実験は始まった。



「トニー!!」



誰かが今倒れた子を呼んだ。
すぐに次の子が実験体にされる。
倒れて、また連れてかれ
もう無事でいる子の人数が少なくなってきた。

幸いか不運か、私が実験されたのは最後だった。
逆にいえば、今まで倒れてったみんなを見殺しにしてた。
まだ死んでない子は治療され、また実験体に使われてた。

思わず後ずさりする無事な者たちの中、最も仲がよかった犬が連れてかれた。
ぎゃぁぁと犬の悲鳴が響き渡る。
怖くて思わず涙を零せば、今度は千種が連れていかれる。
千種の身体を炎が包み込む。また、悲鳴。
次々と連れていかれるみんな。


やめて、犬の声も身体も枯れちゃう
悲鳴が鳴り止まない

やめてよ、千種はケガしてるんだよ
前の実験で巻かれた頭の包帯が、また取れる。






実験は・・・地獄の時間は長かった。
もう日は沈み、研究者は去って行った。
私たちは治療され、死んでった子は乱暴に土に埋葬された。

私は一番、無理な実験に出されなくて、ケガもみんなと比べてほぼ無傷だった。
だから精神的にも一番応えてないといえる。

気力を失ったみんなはがっくりしていて、出された食事にも手を出してなかった。
でもそこは一番気力がある私の仕事。



「みんな、食べよ」

「っ!」



静寂の中、響いた私の声。
私はそう言うと自分の食事に手を出した。
まだ、誰も行動しようとはしなかったけど…



カチャ

「あ…」



千種と犬が食べ始めてくれた。
私は嬉しくて、笑顔でみんなの方を向いた。
始めはみんな、その様子を見てるだけだったけど、
みんな少しずつ食べ始めてくれた。
でも表情は、私みたいに決して明るくはなかった。

ただ一人、妖艶に微笑んで私を見ていた子を除いて。




それから数日後、また実験は再開された。
また響く悲鳴、ここから去り逝く者。
絶望の風景は変わらなかった。




偶然か

必然か

生き残りが私と千種、犬だけになったとき




私の運命が動き出した。




「クフフ」



たった数秒、気付いたときにはもう終わっていた。
研究室は悲鳴や機械音ではなくて、一人の男の子の声が響いた。



「やはり取るに足りない世の中だ」



小さいのに大人びた笑い方。(むしろ謎な笑い方)



「全部消してしまおう――――」



服は血まみれなのに、その奇麗な髪は変わらず奇麗だった。(むしろ奇妙な髪型)



「一緒に来ますか?」



貴方が導いてくれた私の未来









「(いま思えば私たちが遊んでたとき、骸さん何してたんだろう)」

「おや?、どうしたんですか?」



いつものソファで雑誌を見ていると、骸さんがやってきた。
・・・ってかまたアンタ、髑髏の力なしで出てきましたね。



「骸さん!骸さんだけの力じゃ負担が…」

「大丈夫ですよ、は心配性ですね」



大丈夫じゃないから言ってるんですよ?!
そう言うと、クフフと笑う骸さん。
「何か考え事ですか?」
あ、話し反らしましたね。まぁもうツッコミませんが・・・。
見ていた雑誌を置いて座る体制を整えると、私の隣に座る骸さん。



「思い出せるだけ、昔のこと考えてたんです」

「クフフ、面白いですね。どこまで思い出せましたか?」

「骸さんたちに逢うもっともっと前まで」



そう言えば「ほう、興味がありますね」と言う骸さん。
前にも言ったことなかったっけな。人売りまでなら犬辺りに話した気がする。
そう思ってると
「なんで黙ってるんでしょうねぇ、犬は」
・・・怖っ、そして読まれた。
犬へ向けて心で合掌したあと、骸さんにも話す。

「…と、こんなとこです」
「初耳ですよ初耳!なぜ今まで黙っていたんですか!!」

見るとおり、かなり興奮してるらしい。
興奮ってなんかイヤだな。でも、怒り・・もあるんだけど…



「男め、なんて羨まし・・・いや、厭らしいんですか!!」



やっぱり怒りより興奮のほうが的確な表現だ。(何が羨ましいんですか・・・)
その後も「通りでが処女じゃなかったわけですね、くそ」とか、えぇぇ!?なんで知ってんですか!
貴方とそんなことがわかるようなこと、した覚え一切ありませんよ?!
と思ってるとご丁寧にも「反応みればわかります」と説明してくださった骸さん。あぁ・・そうですか。

とりあえずそう知った骸さんが何しでかすか、当然わかるのであえて飛ばして(またキリがないので)
落ち着いたころ、実験のことを思い出した。
私は骸さんや犬みたいに、実験所で得た特別な能力なんてない。
二人は自分の力だからって普通に使ってるけど、本当はどんな気持ちなんだろう。
自分の大嫌いな場所で大嫌いな人たちから入れられた能力。皮肉で、悲しい力。
私はそんな能力があっても、どんなに大きな力でも使わない。使えないと思う。
だって使うたび虚しくなるじゃない。苦しいじゃない。
・・・でもそう思ってるのは私だけで、けっこう考えてないかも。二人なら。
それでも、やっぱり私にとっては嫌な力であることは変わりない。

この、骸さんの右目も。本当は綺麗な青色だったのに、それを否定するかのような赤色。



「、そんなに見つめられると溶けてしまいますよ。僕」

「・・・・骸さんは、溶けませんよ」



むしろ溶けるのは私のほうだろう。どっちかといえば。
そう思っても視線を外さない。お互いに。
思い出す、出会ったころの骸さん。
あのときは手術の直後で、手荒な傷痕があった。
・・・嫌だなぁ。



「逢ったばかりの骸さん、」

「はい」

「右目のつぎはぎが、すごく痛々しかったです」



そういうと骸さんは驚いた顔したあと、「そんなことまで覚えてるんですか」と感心したように言う。
「記憶力がいいんですね、」
「あのときのことは忘れません」
運命が変わった日を、衝撃的な日を誰が忘れるものか。この先何があっても、私は覚えてる自信がある。
そういう意味で強く言えば、骸さんはクフフフと笑う。
骸さんの右目へ手を沿え、目蓋をなぞるように撫でる。(骸さんの癖が移ってる)
くすぐったそうに目を瞑る骸さん。照れるように笑って頬を染める。

骸さんの独特な右目は閉じて見えなくて、極普通の少年のように笑う。
(あぁ、こうして見ると普通・・・いや、ただの美形な人なのに)
こうなってほしかった。骸さんには幸せでいてほしかった。



グニッ

「!?」

「見つめすぎてはいけませんよ。今度は僕が見惚れちゃいます」



とつぜん抓られた頬。痛みに驚いて目を覚ませば、骸さんに言われた。
「また、読みましたね」
「僕から言ってしまえば、は顔に出すぎです」
それは、骸さんだからなのにな・・・。そう思うと「そんなことはわかってます」とまた読まれる。
少し悔しくおもい、自分でもわかるような拗ねた仕種をすれば、
骸さんは両手を私の頬に当て、私の視線を自分へ向けるように顔を上げさせる。



「僕は、この人生でよかったですよ」

「そ、んな…」

「が居るから」

僕の隣りに。



・・・こ、れって・・。待て!思考ストップ私!
あ、ああ危ない。ごめんなさい骸さん、まだ気づきたくないです。
そうぐりんっと180度頭を回して、思いっきり目を逸らした私。
さすがにこれは怒られるかと思ったけど、骸さんは優しい声で笑って

「まだ、ならいいですよ。今はそれを出そうとしたわけじゃないですし」

・・・・・・恥ずかしい・・。
そうならそうと、そうゆう素振り見せないでくださいよ。
あ、じゃあなんだったんだ。どうゆう意味だったんだろう、今のは。
もとに戻すように骸さんへ視線を向けると、今度はがっちりと顔を固定された。(びっくりした)



「これは千種や犬にもいえることなんですがね」

「私たちですか?」

「はい、そしてクロームもです」



こんなに恵まれているんです。
世界は理不尽なことばかりで、いつだって矛盾だらけだ。
生まれてすぐ死ぬことは少なくありませんし、中絶なんて残酷なこともありますしね。
子供が死ぬことは、昔と比べてさらに多くなっています。

「その中に生まれなかっただけでも、まだマシです」
「そうですけど・・・」
「そのうえ、大きな力も手に入れ、も居るのです」

さっきも思ったけど、なんで私だけいうのだろう。
私は何か特別なことをした?・・ない、犬や千種と同じ、もしくはそれ以下の事しかしていない。
だって、私は言うほど『骸さんにすべてを捧げてない』。



「二人と違うところはそこです。二人は僕のいうことなら迷わずなんでもするでしょうね」

「・・・それって、私が悪い意味の特別ってことですか」

「いいえ。自分の意見を持っているということです」

「でも骸さんに言われればやります。だからこそ迷いが…」

「それは、『見失わない』ということですよ」



見失わない?何を、ですか?迷った時点で見失っているんでは?
疑問だらけの目で骸さんを見ると、骸さんは楽しそうに笑う。「クフフ」と。

「僕ら当事者の視点、客観的視点、世界視点、それらを冷静に見れてるんです」

僕のやり方は好きではないでしょう?は。
そう言われて押し黙る。図星だから。
べつに相手に情けをかけるわけではないけど、関係のない人を巻き込むのは良いとは思わない。
ただそれだけ。その程度。だから骸さんの考えに優先する。

「だからこそにスパイを頼み、そしてを欲しいと思うのですよ」

・・・・・まぁつまりは、スパイなどに使える部下ってことですか?
そう聞けば「機転が利く部下、ですよ」そう言われた。




「は、美しいんです」

「・・・はい?」



いきなり何を言い出すんだ。
思って骸さんを凝視すれば、骸さんは言った。


汚れているからこそ美しい。

何も知らない“無知”。
それは当然。子供のように無邪気であることが。
醜い世界と冷たい現実や人をまだ見ていないから、(けが)されていないから。

しかし汚され、汚れを知ったにも関わらず。
あなたは現実を否定せずに、生きていく。
気高く前を、世界を、自分をみつめる。

汚れを知った人間は、かならずよごれ荒むというのに――
この僕のように。



「家族、人売り、契約者の男、マフィア、そして僕。
  は多くの者に汚されても、“世界”を捨てないで生きる。
   賢く自分の状況を把握できる。

    美しく、“優しく”出来る人なんです」



放心してる私。驚くことばかり。
美しいだって、優しいだってそんな言われたことないし
骸さんにこう思われてたことだって、まったく知らなかった。

「まぁそれでも僕は、自分の考えを正そうとは思いませんが」
世界なんて知ったことではありません。

そう言うまでは少しむすっとしてた骸さん。
だけど、次の瞬間には、暖かく微笑んでいた。
「だから…」



「そんなに出逢えて、いま一緒にいれることがよかったですよ。この人生は」



そう骸さんは言って、私の頭を撫でてくれた。
あぁ、なんだか骸さん、マリア様みたいだ。
もうなんだか泣けちゃって、抱きしめてもらっちゃ言うしかないでしょう。
愛しさが溢れて、自然と言ってしまう。



「私も、骸さんに逢えてよかったです」









あなたと逢える人生













~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

よく見つめあう二人だなぁ。ハズイ。
しかし骸さん相手だと綺麗な愛を書きたくなる。見つめたり、頭や頬撫でたり。
骸さんはこうゆう趣味のいい銃を使ってると信じて止まない(爆

書いといてあれですけど・・・難しい話はキライだ・・!(ぁ



2008.08.29