このまま・・・私は永遠と『後悔』に押し潰されるのだろうか。
一月前のマフィア殲滅作戦のとき…
『骸さん!あいつ等自分たちからやってきたびょん!』
バタバタとヘルシーランドに響く音。
こんな音を鳴らすのは、たいてい犬の足音だった。
骸さんと私が居る部屋に犬が入ると同時に犬は叫び、骸さんや私はしかめ面になる。
犬の煩く響く声が消えていくのを感じ、初めて犬の言ったことを考える。
『おや?本当ですか。それは手間が省ける』
『でもまだM.Mたちが到着してません』
おまけに千種もまだ倒れてますし。
そう付け加えるとどうしましょうかねぇ、と言う骸さん。
クフフと笑う声はとても楽しそうだった。
『俺、行ってくるびょん!』
『あ、犬…』
骸さんの話も聞かずに行ってしまった犬を止めようとしたが、もう遅かった。
ふぅ、とため息を吐いた私を、骸さんはじっと見ていた。
別に視線に気づかないフリをしてるんでもなかった。
ただ私には千種の看病や他の仕事もあるし、
骸さんが言わんとすることを聞き出す権利は、残念ながら私にはない。
そう思ってたけど
丁度、千種のメガネを拭き終えたときに
骸さんから話してくれた。
『』
『はい』
『他はもういいです。最重要任務を与えます』
『ついに私も戦闘入りですか』
『いえ』
少し覚悟をして言った言葉は呆気なく否定され、
『え?』と少し驚きながら骸さんを見た。
寂しそうな表情の骸さんを見た瞬間、嫌な予感が全身を駆け巡った。
『この場から離れ、イタリアへ行きなさい』
今度はえ、とも言えなかった。
それは、このパターンを少しはイメージしてたからだろう。
驚きはそれほどでもないし、その言葉を理解するのは早かった。
ただ、最も早く反応したのは私の涙だった。
『ま・・た、ですか?』
『すいません』
骸さんは、それだけしか言ってくれなかった。
でも立ち尽くしていた私の元まで来て、抱きしめて撫でてくれていた。
背中と肩、たぶん態とそこを撫でてるんだろう。
私の大好きな、肝心なところは撫でてくれない。
『今度捕まれば、前よりも奥深くに入れられるでしょう』
『・・・はい』
『なら誘導なしでは不可能に近い。それだけはあってはなりません』
『・・・・』
『また、の脱獄手引きが必要なんです』
『・・・は、い』
宥めるように、抱きしめられた瞬間に悲しみがこみ上げてきてしまった私を落ち着かせるように。
まだ身体が理解していない私を理解させるように、優しく教えてくれる骸さん。
ぎゅっと骸さんを掴んでる手に力を入れれば、屈んで深く抱きしめてくれる骸さん。
『行って・・くれますか?』
そのときの骸さん全てが優しすぎて、結局理解してしまったんだ。
『・・・わかりました』
今思えば、なんで理解してしまったのだろう。
私が『もしものため』じゃなくて、
『もしもの可能性も消すため』で戦ってたら、勝って捕まらなかったかもしれなかったのに。
でもたぶん、私はあーゆー風にしかできなかったんだ。
骸さんには全ての感情が飲み込まれて、従うしかない。
でも・・・それでも脱獄だって、必ず成功なんてありえない。
こう考えなかった自分はバカ以外の何者でもない。
私が失敗してしまったばかりに、
自分の追放はまだしも、骸さんはまた捕まってしまった。
幸いにも、犬と千種は脱獄できてた。
そして自分たちのために骸さんが捕まったことも聞いた。
骸さん・・・。どうして私たちなんかのために、
自分を犠牲にしてしまったのですか?自ら捕まったんですか?
わたしたちじゃ、骸さんじゃなきゃ意味がないのに!
そうやって私は、もう何回目かわからないほど
自分の愚かさを感じながら後悔ばかりしていた。
(犬、千種。ごめんね。立ち直れないよ…)
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ツナたちとのVS直前話。
ヒロインはイタリアでまた脱獄手引きの準備で、その場に居ませんでした。
(ってことは、ちゃんとツナをまだ知らない・・!/ぁ)
なので捕まらないで済んだのですが、今度は失敗しちゃってバレた。
そして悲しみに明け暮れてしまいます。珍しくシリアス。
次は髑髏と出会い編か、骸たちとの出会い編を書きたい。
2008.04.01