「うわぁ!」
「・・・・」
何がしたいんでしょう、この子は。私に何を求めているんでしょう、この子は。そう思いながらとりあえず無表情で見つめれば「ひっでー」と彼の声。だから何求めてんですかって。
「反応」
「無反応という反応をしました」
「ひっで」
拗ねたように私の座ってる2人用ソファに身を投げる赤也。あんね。アンタ、ここは立海のテニス部部室じゃないのよ。早速くつろいでんな。諦めたように手元の部誌へ視線を戻す。
「ってテメーも氷帝じゃねぇだろうが」
「慣れんの早っ」
ぞろぞろと帰ってきた氷帝レギュラー陣。もちろんテニス部員だ。
「そうじゃなかったら可笑しいだろ」
「オモロイこと言うんやな、立海マネは」
メガネが私に触れようと手を伸ばすが、赤也がそれを止めた。(ってか手を叩き落した)(アンタ、仮にも年上に・・・)
「悪いッスけど、手出さない方が身のためッスよ」
「幸村、元気そうやな」
傍から見ればかみ合ってない会話だが、実はかみ合ってたりする。私はマネとして他校へ潜入調査。赤也は護衛。(レギュラーなのにね。ごめんね)撫でようと赤也の頭に手を置いたが、相変わらず凄い髪型なので止めといた。(・・・ごめんね)
「堂々と出てたら潜入捜査って言わへんのやないか?」
「そうだぜくそくそ立海め!どきやがれ!」
文句言うのに態々跳ぶ必要はないと思う。どうでもいいので、無視した。だってそんなことより、捜査の結果を出さなきゃ部長に殺されるもの。ここはマジメに仕事よ。黙々と部誌とにらめっこすれば、太腿らへんに重みがずしっと。どうせ赤也がふざけて膝枕とかしてんだろとか思ったけど、むにゃむにゃと眠そうな声がする。(あ・・れ?)見れば芥川くんが居る。おいおいおい、君、何他校のしかもライバル校のマネに膝枕してもらってんですか、しかも無断ですか。とりあえず重いので退けたかったけど、動かない。
「ふにふにしてきもちE・・・うちのマネよりイイかも」こらこら、さり気なくセクハラだこれは。(氷帝マネかわいそうでしょ!可愛いのに)抵抗として部誌を芥川くんの顔の上に乗せ、机代わりにした。「あら丁度いい机」「「「「 (ひでぇ・・・) 」」」」周りから数人分の視線を感じるが、当の本人は無反応。どうやら寝たようだ。早いなおい。しかもなんか握ってない?制服にシワよっちゃうじゃない。それは困るため、部誌を畳んで芥川くんにとって下から顎を叩いた。「いって」(あ、一発で目覚ました)膝枕は(机になるから)いいとして、制服を掴むのだけはやめさせると私はまた部誌の方へ取り掛かった。「・・・あれ?先輩?」部屋の外から赤也の声が聞こえた。(ちょっとアンタどこ行ってたのさ)声の方を見ると、部屋の外から赤也が顔出して覗いてる。そして私を凝視。
「先輩、もしかして・・・」
「は?」
「さっさと出ろっつってんだよ」
跡部(呼び捨て)の言葉に彼の顔を見ると、何故か睨まれてる。「あーん?聞いてなかったのか」聞いてませんよ、悪かったね。(あぁ、だから静かだったんだ)(芥川くんに誰も突っ込んでくれなかったのは、話してたからなのね)「お宅の部員が私を枕代わりに使ってまして、退ける対処をしていましたの」そうお嬢様風にいえば(一応ここは、あの氷帝だしね)今度はソファに横たわっている芥川くんの睨みつけた跡部。どうやら着替えをするようだ。(あぁ、鳳くんね)そう納得したが、この頭が邪魔ですよ退くには。そうゆう意味で少し跡部を見ると、彼は芥川くんに蹴りを入れる。(ちょっと、文字がズレたらどうしてくれんの)それでも起きないようで「いいわよ、私は部誌しか見ないから」とフォローをいれる。あ、ちょっと鳳くんがびっくりしてる。かわいい。(うちにはないタイプだわ)(是非我が校に・・・)(どっかの学校のくるくるマネージャー風に)一方跡部はそれで納得したようで、自分のロッカーへと行った。(おいおい、部員見捨てていいんですか)とりあえず鳳くんと目が合ったので、にっこり笑っておく。そしてすぐに部誌を見る。(約束だからね)ちなみに部屋の外から「あ、やっぱ居るんだ。っつか先輩はいいのかよ」って赤也の声が聞こえた。(あら、まだ居たの)しかし氷帝は楽しそうだなぁ。一応捜査だし、彼らの会話でもメモしておこう。
「気にすんな長太郎」
「で、でも宍戸さん・・・」
(可愛い素敵な先輩と後輩。まさに青春)
「侑士侑士!アイツ女としての自覚あんのか」
「俺に聞くなや」
(聞こえてるぞミソ)
「おい樺地、後で日吉呼びに行け」
「ウス」
(私も樺地くんほしい)
うちは絶対こうゆう会話はしないからね。しても赤也とブン太。真田と柳と柳生は礼儀?とかで静かに済ませるし、仁王は本人曰く放課後のこと考えて黙ってるし(どうせ女遊びだ)いいなぁ楽しそうで。でもこっちには柳みたいにデータで頼れる人が居ないな。それなりに成績優秀だと思うけど。それにまずあの氷帝コールについていけない・・・。一般人でごめんなさい。うちの連中はそんなコールなくても、もっと単純に頑張るから。真田は「気合だぁ!」って言えば本当に気合入れるし、柳はこっちがデータ解析してデータ魂の対抗心燃やせばいいし。仁王は・・・まぁわかんないけど、柳生は勝つこと約束すれば約束守ろうとしてくれるし。ブン太は食べ物で釣るし、赤也はわかめって言えばいいし、ジャッカルはジャッカルだし(=どうで
もいい)あぁ、転校しようかな。部長アレだし
そうぼおっと考えてたら、いつの間にか跡部を凝視してたようだ。(部長同士を比べて)
「なんだ?俺様に惚れたか」
「アホなこと言わないでタコ」
あ、しまった。なんてこと口走ってしまったんだろ。周りも相当驚いてるし。(全員こっち向いてるよ)やばいな、あの何様俺様跡部様にタコ言っちゃった。本人も凄い驚いてるし、まさか悪口言われたの人生初?いわゆるファーストアビューズってやつ?(あれ?アビューズでいいんだよね)(ってそこは問題じゃない)少し沈黙が流れた後、「ククク・・・・フハハハハ!!」と跡部が突然笑い出した。(き、キレたか!?)その声と同時に「先輩大丈夫ッスか!!?」とドアが開いて赤也がきた。(お前、盗み聞きしてて固まってたな)(助けろや)とりあえず赤也の後ろに隠れる。「ちょ、盾にしないでくださいよ!」「うるさい盾!今日からアンタは盾也よ」「Σダサッ!」呑気な会話をしてると跡部が顔を上げた!(びくっ)
「ふ、いい度胸じゃねぇか。この俺様に向かって」
「ど、どうも?(なんかわからんが褒められてんな)」
「心配すんな。俺は強気な女は好きだぜ」
「は、はぁ・・・(今、現在進行形で超びくびくしてんですが)」
「その根性気に入った」
とりあえず訳もわからず返事だけしてると、跡部さんが急に近づいてきた(意味わかんなさすぎて、私も急にさん付けだわ)マジメに怖くなったので、赤也を盾に捕まえてようとするが、寸でのとこで避けられた(た、盾!盾がなんもない!あ、ジャージ!)と、そこらへんの人様のジャージを取って盾にしてたら、ジャージごと押さえつけられた。(うぉ!?いつの間にか後ろに壁が!)
「俺の女になれ」
と、命令系での告白。
いや・・・いやいやいや、可笑しいでしょ。なんでいきなり?「気に入ったっつったろうが」さいですか。じゃなくて、なんでいきなり気に入んねん。大体アナタ、私の名前も知らないでしょう?そんな仲なのに…「だろ」「な、ななななんで知ってんの!?プライバシーの侵害だ!」「あーん?テメーんとこの柳と一緒だろうが」・・・そうですね。今度から柳にバシッと言っとこう。『犯罪です』と。そう固く決意してると、顎を手で押さえ顔を固定され無理やり跡部の方へ向けられた。「もう質問はねぇか」俺とが付き合うのに必要な問題は、と言われた。(な、名前よばれた・・!)とりあえずタコと言ったとはいえ、それは内面のことで顔は超が3個ぐらいついてしまうほどの美形だ。こんな至近距離、心臓に悪い!顔を真っ赤にしながら渋々「は・・い・・・」と返事をすれば綺麗な顔がニヤッと妖艶に微笑んだ。不覚にもどきっとしてるとなんか携帯奪われた。
「ちょ、何してんのよ!」
「あーん。俺様の番号入れてやってんだろ」
「はぁ?」
素頓狂な声を出すとぽいっと携帯を投げ返された。慌てて受け取ると「今日からお前は俺の女だ」とまたもや言われた言葉。ってか言った瞬間「オラ樺地、行くぞ」「ウス」と樺地くん連れて行っちゃった・・・。なんだあの嵐のような男は。内心怒りながらも、多分赤面であろう顔を手で覆う。と、携帯が震える。(び、びっくりした)携帯を開くと『もうそろそろ帰ってこい。時間がすぎるぞ』と柳からのお優しいご忠告が。急いで赤也に知らせると帰り支度をせっせかとする。「おじゃましました!」と氷帝のみなさんに言って、いざ駅へ全速力疾走。「赤也!アンタ速い!待て!」「命に関わるんで待てないッス!」
結局、電車が行ってしまったばかりの時に2人共ホームに着いたので待つはめになった。よかった、赤也に置いてかれるところだった。先
に着いて休憩し終えた赤也を睨んで深呼吸。ようやく息を整えられたときにまた冷静に考える。(そっか・・・女ってことは、跡部は彼氏か?美形彼氏か・・)なんだかちょっと誇らしい恋人を持って嬉しい。(こ、恋人って響き恥ずかしいな)そう思ってたら、赤也が顔を覗いてきた。
「あっれー?先輩、なんか顔赤いッスよ?」
「う、うっさい!そんなことないよ!」
「(肯定してるようなもんじゃん)」
あの日以来、跡部が何か変にご機嫌な上、常に笑顔で居るという情報が私の元へ届くのは、まだ先の話
ハッピーフェイス
(おかえり2人共。で、収穫はあったかい?)(先輩がテニス部部長の跡部さんを彼氏にしてきました)((ブッ))
(言わなくていいものを…/ちなみに赤也は護衛をしてませんでした)(Σぶっ!/忘れてた・・!)(・・・赤也?)(す、すんませんっした!!)
2007.12.09