休み時間に呼び出されたから、クラスから出て
適当に用事を済まして、の様子を見ようと教室の中を覗きこむ。
すると珍しく一人でいる。机の上の雑誌をみているようだ。
なんとなく違和感を覚えてそのまま教室には入らないで様子をみていた。
あいつはいつもクラスメイトの女と話してるか、ハルたちに囲まれてるかだ。(9割後者だけどな)
どうしても雑誌をみてたい理由があるのか。
少し考えると、いつものようにあいつらがを囲った。
「どうした?何その雑誌」
「ハルくん、タケ・・・」
の席は廊下側でかつドア付近で、会話の内容は丸解りだった。
ハルやタケが雑誌をみようと屈むと腕を退けて2人に見せる。
その瞬間「あ」と声を出すハルだったが、素早く雑誌を取ったのはタケだった。
「食いモン・・」
心なしか、輝いてるタケの目と声。
その呟きを聞いて、俺は小さくため息をつく。
(グルメ雑誌かよ。あいつ腹へってんのか?)
今度なんか作ってってやろうかと考えてると、ハルがタケをつっこむ声がする。
タケから雑誌を奪い返したハルは雑誌のある一部分に指をさす。
「これ、一護じゃない?」
(・・・は?)
ハルの言ったセリフに理解が遅れるも、
そういや前、うちの店に記者がきて取材されたっけな
と、じわじわ思い出す。
が持ってるグルメ雑誌に、うちの店が載ってるってことか。
はハルのセリフにコクリと頷く。だけどその表情は暗くて。
それに気づいたハルやタケも、を心配そうにみる。
俺も少し気になってもっとよく聞こえるよう、耳を澄まして会話を聞く。
元気のなさそうに呟きながら説明しようと、は口を開いた。
「おじさんのお店が有名になるのは嬉しいよ。
でもそれと同時に客足も増えて、女の子もいっぱいきて
それでいっちゃんのファンもまた増えるんだろうな、って考えると・・・」
そこまで話すと、カクンとうな垂れる。重々しいため息をついた。
・・・んなこと考えてたのか。あいつは。
らしいような、信じてもらえてないみてぇで寂しいような。
どっちにしろため息をつきたいのはこっちだと言いたい気分だが、
ハルがを気遣ってる中、タケがぽつりと
「なんだ、嫉妬か」
と言うもんだから、さっきまでのもやもやがもう綺麗に取れてしまう。
自分でも単純すぎて恥ずかしくて、照れ隠しでたちの様子を睨むようにみる。
「ちち、ちが、嫉妬じゃなくて寂しいとかそういう・・!!」
「なんだ、のろけか」
「ちがーーう!!」
顔を真っ赤に染め上げて手をじたばたさせる。
けらけら笑うハルに頬を膨らませて否定するだが、
タケの「なんだ、ツンデレか」の一言になお顔を赤くして暴れる。
(ったく・・・あいつからかわれてんな)
をからかっていいのは俺だけだっつの。
飛び出すようにしてドアの陰から出た俺はそのまま教室に入り
驚くの腕を掴んで、教室を離れる。
人気のない端の階段の踊り場で足を止める。
の腕は離さず、振り返る。
振り返った先のは不安そうな表情で俺をみていた。
そんなを安心させるように、少しの頭を撫でながら言う。
「お前、俺以外にからかわれんな」
前にも言ったこのセリフに、は顔をまた赤くして俯きながら
「ごめんなさい」
と小さく謝った。
べつに謝ってほしいわけじゃねぇんだけどな・・・。と他の男が楽しそうに居るのが面白くないわけで。
怒ってるわけじゃないのを伝えようと、を抱きしめる。
「い、いっちゃん、ここ学校だよ・・!?」
「お前が悪い」
が、俺のことで嫉妬するとか。他のやつにからかわれるだとか。
そんなに可愛く、俺に従順なお前が悪い。
「、逃げんなよ」
俺の気の済むまで、を求めた。
陰で君を想う
2011.04.17(CM出演おめでとう記念)