わりとオシャレは好き。
色んな服装はするし、部屋のインテリアもそのときどきマイブームはあるけど、住み心地のいいものをそろえてる。
M.Mみたいにブランドものを集めてるわけではないけど、いいと思ったものにとくに値段は気にしない。高すぎても安すぎても。
そんな私がこのブランドもののスカートを身に着けるのは少し珍しくて。(まあM.Mにもらったものだけど)
ほかのアイテムなんかもそれに合うようなシックでエレガントなコーディネートにしたりして。
「優雅で綺麗ね」「絵になるわぁ」
目の前の清楚な白いワンピースを着ている彼女と喫茶店でお茶をしている図は、普段より少し人目が多い気がする。


「ここのクッキーがおいしいんです。さんもどうぞ」
「ありがとう、ユニ」


少し大き目のお皿に数枚乗ったクッキーは、とても彼女によく似合っていた。
代理戦争が終わり、アルコバレーノの呪縛から解放されたユニの首には、もうおしゃぶりはない。
用事が済んだことからイタリアへ帰るユニは、そのまえに会いたいと今回お出かけに誘ってくれたのだった。
「今日はたくさんお買いものに付き合ってもらえて、とっても楽しかったです!」
「私こそ、ユニと過ごせて楽しかったよ」
いまはなき10年後の出来事。そこではこうしてお茶することはあったものの、いまのような穏やかな過ごし方はしていなかった。
まあ打倒白蘭の作戦会議のお茶やら、とても楽しく過ごせる世界ではなかったからなのだけど。
日差しが窓際に座るユニを照らし、笑顔でクッキーを頬張る彼女はとても綺麗だった。

ふと目線が合うとユニはきょとんとし、私は少し慌ててお茶を飲む。
そうするとユニは私をみつめながら眩しそうに目を細め、嬉しそうに言う。
「お茶を飲むさんって、とっても素敵です」
「えぇぇ…? そんなことないよ」
「日差しがキラキラ当たって、大人っぽくて綺麗です」
「やめてよ、それ言ったらユニにだって、私そう思ってたとこだったし」
「え?」
私が思ってるまるまる同じことを言われ、照れてしまう。
なんだか焦ってしまって、ユニにもオウム返しのようにそう伝えるとユニまで照れたように頬を赤くさせる。
お互い『あなたが、あなたが』で妙な雰囲気で褒め合っていると、

「ねぇ、あそこのテーブル…」
「うわぁ!すごく素敵な姉妹ね」

少し離れたところから声がして。
ユニも聞こえたのか。二人顔を見合わせて、おかしくて二人で笑いだす。
ユニは歳こそ子供だけど、とても落ち着いてて話しやすい。正直一番しゃべりやすい相手だった。
それはアルコバレーノという重い運命を背負って覚悟して生きてきた彼女だからこそ、感じた印象だったのかもしれない。
いつも身につけていたおしゃぶりは、母から授かったものだから大事にとってると言っていた。
イタリアのジッリョネロの本拠地に帰ることでユニは、母のアリアと再会する。そのときに、子供らしく。幸せに生きてくれればいい。
彼女との別れは惜しかったが、この最後のお茶会ができて、そして彼女が楽しんでくれて。
(ちょっと無理したけど、来てよかった・・・)
ユニと会うことで警戒した骸さんたちを説得してきたことを思い出して、無事来れたことに改めて安堵した。
説得といってもやっぱり骸さんはムスッとしたままだったし。
おいしかったここのクッキーをお土産に、"なにもなかった"となだめてみよう。もちろん犬や千種や、みんなの分も。
店員さんにお土産用のクッキーを包んでもらおうとすると、ユニも「白蘭も甘いものが好きなので」と二人で注文した。

「私、いま、さんと"姉妹"って言われたの、すごくうれしかったです」
ぽつりとユニがこぼす。
その姿は妙に照れていて。なんだかもじもじとしてさえ見える。
「無茶は承知のうえなのですが・・・さんにお願いがあるんです」
「え?」
普段あまり見られないユニのそんな姿に、何事かと思わず聴く体制を整える。
気のせいか、外の風が強まったように木々が揺れ始める。
空気が変わったようにすら思えるこの瞬間に、私は警戒しておくべきだった。



「さんは、骸さんたちと日本にいるのですか?」

「うんまあ・・・。ボンゴレが日本にいるから、骸さんはそれ狙ってるんじゃないかな」

「マフィアが目的なら、イタリアにきてもいいと思うんです!」

「う、うん、そうね(ユニ…?)

「いっしょに、いっしょにイタリアにきてはもらえませんか!?」



必死に懇願するユニは、手を組んで拝むように私に言う。
(マフィアが目的ならって・・・ユニにしては)
多少違和感を覚えるけれど、冷静に受け答えするしかない私は、
ユニの手をゆっくり解きながら、落ち着かせるように話す。
「私は、骸さんのいるところにしか行けないし、骸さんは日本にいるみたいだから」
ゆっくり話すとユニもわかってくれたのか、次第に力んでいた手を下ろし、同時に残念そうにうつむいていった。

「そう、ですよね・・・」
「なにかあったのなら、協力はするから。そっち関係の話なら、場所変えようか――」

私はそう言って立ちあがった瞬間、誰かの腕に包まれる。
でもそれはいつもの、骸さんの腕ではなくて、はっきりとわからないまま周りの声は遠く意識は薄らいでいった。



『白蘭! いきなりなんてことを…!』
『聞いたでしょ?強行突破だよっ』


(・・・白蘭…?)



ラッピングされたクッキーが、贈られることはなかった。

















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シリーズ白蘭、序章終わり!本編へはいる!
こっから楽しくなっていきますように←




2014.04.27