日本の文化は独特だ。
大昔の日本人の発想には驚かされる。よくそこらに生えてるただの"草"を、家の床にしようと考えたもんだ。
均等に縫われてるそれらはもはや芸術品だとすら思う。こんな根気がいるような作業、自分では考えもしない。(ビリヤードのように一瞬で片がつくものでなきゃ続かない)
旅館から借りた浴衣を着て、これまた芸術品のような夕食を食べ終え、俺は部屋へ戻った。
まだ開け慣れない襖をガタガタいわせながら開けると、並べられた布団をすべてくっつけ、円を作るように数人が座っている。
「ではみなさん。これより "白蘭とさんをくっつけラブラブ作戦"の会議を行います!!! 」
姫、そのハチマキはやめてくれ・・・。
全体の指揮をとる姫の頭には、作戦名が書かれたハチマキがまかれていた。
その場にいる俺以外の全員がそれを巻いており、それはそれはとてもマフィアのファミリーの光景には見えなかった。
『みんなこんなに協力してくれて嬉しいなー』とほざく白蘭の周りには、
白蘭側の、桔梗やザクロが呆れ顔で仕方なくハチマキを巻いている。お前らも従う主人は選べ。
布団の上で会議をする面々から少し離れた、ちゃぶ台から見守ることにした俺。
近づけば姫や野猿のそばに置いてある、余った一つのハチマキを渡されることは目に見えてるからな。
しかし話題が話題とはいえ、とても生き生きと話す姫の姿を見て、少し安心した。
やはり戦いごとは戦いごと。姫は望んでいない。なにか考えがあるから参加を決意しているものの、傷つけあうことには変わりない。
姫の複雑な心境を読み取れないほど、俺は鈍くない。ここ数日の姫の表情はかたかった。
しかし白蘭と再会し、戦い以外の目的ができたことで紛らわせているのだろうか。いまは曇りのない笑顔で過ごしている。
自然と口元は緩んでいることに気付き、慌てて引き締めると輪から外れた白蘭が俺の向かいへ座る。
「ユニが元気になって安心した?」「うるせえ」
売店で山のように買ってきた、この旅館の茶菓子を大量に開け、食後と思えないほど次々と口に運んでいく白蘭。
俺が自分用に淹れていた日本茶に目をつけると、「僕にも淹れてよ♪」と図々しく湯のみを突きだす。
もののついでに淹れてやった茶を渡すと、熱くてすぐに飲めないと判断したのか、冷ますためすぐに立ち去りそうにはなかった。
「白蘭。この作戦は意味があるものなんだろうな。姫を利用したら…」
「もーう。何回も言ってるじゃん。本心なのー。をお嫁さんにしたいの」
いまならゆっくり話しができて、真意も探れると思って話したが、結論は変わらず。
敵だったがゆえに、白蘭のことはじっくり観察したきたおかげか、少しは白蘭の性格を理解しているつもりだ。
こうしつこく聞けばなにかしら尻尾をわざと出してくるのが白蘭だが、いまはそんな気はないようで。
ひとまず本心と考えていいようだ。真実ならば、どういうことになってくるか。
(白蘭が女に落ち着けば、姫への接触も減るだろう。それならば俺たちに好都合)
俺たちジッリョネロファミリーにとって白蘭は要注意人物だ。
たとえそれが未来の話であったとしても、人格が変わったとしても可能性が消えたわけじゃない。
アリアのためにも、さっさと白蘭を姫から引き離す必要がある。俺たちはその護衛でもあるんだ。
ということは、ここは協力することにデメリットはなく、むしろメリットしかない。
もう一度作戦会議をしていた布団の上の面々を見る。
そこには真剣に頭を悩ませながらも、年相応にはしゃぎみんなと話している姫の姿。
自然と緩む口にまた気付き、白蘭に向き直る。
「姫が信じた女だからな。俺は、信じるからな」
なんのためらいもなく伸ばされた手は、山のようにあった茶菓子の最後の一つをつかむ。
そのまま開けられると思った包みは未開封のまま、俺のほうへ投げ出された。
ようやく冷めたお茶を一口飲むと、白蘭は俺に、気味が悪いほどにっこりと笑いかけた。
「日本茶っておいしいね。今度はに淹れてもらいたいなあ」
それはまるで。彼女と自分が一緒になることを約束するように聞こえた。
「白蘭!そういうことでヴェルデチームと同盟を組むことが最善だと思うのですが!」
「えー。ムリじゃない?」
「き、貴様! せっかく姫が協力しているというのに、やる気あるのか!」
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γ、協力する気になる。
ま、また主人公でなかった・・・。いやしかしミルフィオ―レ会議一回やりたかったんだ。
そしてγがパパすぎる。
2014.04.21