記憶を受け継いで数日。
情報量のありすぎる記憶は流れ込んだ瞬間から僕を悩ませた。
記憶と気持ちの整理をするだけで時間もかかったし、それを受け入れるのにも。
だって記憶記憶って言うけど、ただの僕の妄想って言ってしまえばおしまいでしょ?
でもそれじゃあつまらないし、一応全部受け入れたうえで整理してみた。
そして、それが正しかったことを証明する人物と出逢う。
「・・・アリア」
ユニの母親であり、現大空のアルコバレーノを務めるアリア。
記憶のこと。今度行われる『虹の代理戦争』のこと。出逢って早々必要な話だけを済ませた彼女は「時間がない」と、去っていった。
確かな情報を手に入れられたところで、実行ができる。
あれだけの情報があったにも関わらず、あれだけ世界を振り回したにも関わらず。
当然といえば当然だが、世界の征服をし終えた僕に、そういった欲はなかった。満足しきっている。
それらから湧く次の欲は、今まで尽力してきた征服なんかじゃない。
空っぽの僕をよみがえらせてくれたユニへの感謝と、
「・・・きみに逢いたい」
まだ見ぬきみへの恋心。
この二つの目的が、この記憶で手に入れた僕の生きる意味。
ユニは、のち起こる代理戦争で会えるとして、今は僕の気持ちを優先させちゃっても大丈夫かな。アリアごめんね♪
まずはを迎えに行くことにして、日本へ渡る。
日本へ渡ったはいいけど、は僕から逃げるように場所を転々と移動し、なかなか捕まらない。
ついには代理戦争のときまできて、ユニに会えるのは嬉しいけど僕はイライラ。
ユニと会ったところで絡んでくる取り巻きのみんなを適当にあしらい、
場所を移動するでも、本題の代理戦争のことでもなく、僕は早速ユニに"本来の目的"を話した。
「ユニユニ。代理戦争で協力する代わりに、僕のお願いもきいてほしいんだ」
「なっ!? 姫になにをさせる気だ!」
「私に協力できることであれば」
「姫!」
しゃがんでユニと目線を合わせ、頼み込むようにユニの肩を掴むと、γくんが僕の手をはじく。
それをなだめて笑顔で僕の言うことをきいてくれるユニに、その労力は無駄に終わった。
まあ僕の背中で「白蘭!私がお願い叶えてあげるよ!」と首にひっつくブルーベルもいて、話しにくいっちゃあ話しにくいけれど。
ユニと仲良くしたいだけなのに、いろいろと障害があるのは少しわずらわしいけれど、ユニ本人が協力的だから助かるな。
いまにも僕にかみつこうとするγくんの前で構える桔梗たち。ブルーベルを野猿の前に降ろして、やっと落ち着いてユニと話せる。
「あのね。僕との仲をとりもってほしいんだ!」
「なっ…!?」
「まあ!」
「白蘭様!?」
*
紅茶と一緒に並べられたクッキーを一つ掴み、さくさくさくさくと食べ続ける。
一旦落ち着こうと案内されたユニたちの屋敷で、和やかな空気の中、向かいに座っているユニと話す。
「のことは覚えてるでしょ?」
「えぇ、10年後の最後の最後まで、お世話になりました」
ニコニコとユニに話すと、ユニも嬉しそうに微笑み返す。
同じクッキーをさくさくと食べると、ユニも幸せそうに「おいしい」と笑った。
「みなさんもどうですか?」
「「「・・・・・・・・・」」」
不審そうに、面白くなさそうに僕らを見つめる周りのみんな。
γくんたちは僕が何か企んでるのかと危惧してるみたいに僕を。
桔梗やザクロたちは、僕が何を考えているのかと呆れ顔で僕を。
それぞれ言いたいことはあるようだけど、いまはトップ2人の会話にはつっこんでいかない。
のことはユニも知っている。綱吉くんに止められたあの世界では、ユニはとともに行動していたときもあった。ほんの一時だけれど。
そのときにがユニの世話をしたことからにはよく懐いていたはずだった。も信頼していたはず。
それなら素直に使える手は使ったほうがいいよね。それでってことで、僕の思惑はみんなに話したのだけれど…
「そろそろみんなも協力的にならない?」
γくんたちはしょうがないのだろうけれど。せめて桔梗たちくらいは応援してほしいんだけどなぁ。
ブルーベルは協力する気0だから期待してないけど、つんつんとザクロに同意を求めるようにちょっかいを出す。
「ん?あぁ・・・白蘭様がそう言うなら協力してぇが・・・なあ?」
「私も白蘭様が言うなら意義はありませんが・・・どうにも」
「あんな女のどこがいいのよ!! ただの一般人でしょ!!」
バッサリ言ったブルーベルと同じ考えのようで。命令はききそうだけど、納得はしてないらしい。
まあみんなはと接触しないしね。よく知らないかは、わからないけれど。(10年後もずっと追いかけてたし、桔梗は調べるの好きだし)
たしかには骸くんたちと居るとはいえ、一見一般人となんら変わらない女の子。
でも僕は、それにユニも知っている。一般人と差がつくオプションを。
あくまで僕はオプションとしか考えてないから、べつにそれがなくったって関係ないんだけどね。そこが好きなわけじゃないし。
とりあえずこっちはあとで説得するか無理やり命令するかして、どうにかするとして。
ニコッとほほ笑みかける。
するとその視線を追うようにユニがその視線の先へ向く。
「ねっγ。協力していただけませんか」
始終 僕を睨みつけていたγくんは、ユニにきかれ、ギクッと肩を震わせた。
もちろん僕がなにか企んでないかが一番の気がかりなんだろうけど、彼の表情からするに『なんで自分が敵意ある人間の恋仲を取り持ってやらなきゃいけないのか』ってことだよね。
ユニ側のみんながそんな顔でいて。とりあえず判断はγくんに任せてるってところかな。
γくんが渋るのを見て、ユニが少し興奮気味に説得を試みる。
「白蘭が恋をしたのですよ! あの、白蘭が!」
「そ、そうだが・・・罠だという可能性も・・!」
「いいえ! 白蘭は本気です!!」
一生懸命語っちゃって、ユニかわいいなぁ。ユニにはどうしても協力したい理由があるからなんだけど。
ユニの人柄の良さに加え、今回代理戦争での代理として参加するための交換条件。それだけでもユニは動いただろうけれど、なにより…
「白蘭はもはや私たちの身内です! その白蘭がさんと結ばれたら!
さんが私たちの身内に、ミルフィオ―レに、私のお姉さんになるのですよ!!!」
ユニ 熱いなぁー・・・。
兄弟のいないユニにとって、僕は手間のかかる兄のような存在だったのだろうけど、
その僕の結婚は、イコール ユニに姉的存在ができるって認識だからね。それもその相手が自分が慕ってきたであったらなおさら。
ユニは輝かしい期待の目でγくんにお願いをしている。あっはっは、γくんたじたじ!
「・・・・ひ、姫がそう言うなら」
結局ユニに逆らえなかったγくんたちは頷いてくれた。
大喜びではしゃぎまわるユニの影で、こっそりγくんは僕に耳打ちをする。
「おい、本当にただ協力するだけなんだろうな。姫になにかあったら…」
「だからそうだって言ってるじゃーん。ユニに協力してもらうのは、がユニには逆らえないからだよ。キミたちと同じでね」
「てめぇ…!」
さて、γくんたちは了承してくれたし、ユニはやる気満々だし。
一番うるさいブルーベルは野猿と遊んでるから、準備は万端かな?
太猿にのことを話しているユニを落ち着かせて、早速ユニに協力してもらう。
そう、代理戦争でユニの力になるのはもちろん、ユニに会いに来たのはこのためでもあった。
「ユニ。キミには見えているよね。僕たちを映す未来が」
「僕がに逢えるのは、いつだい?」
できれば代理戦争が始まる前がいいなぁー。終わってからじゃ遠すぎて。僕干からびちゃうよ。
僕がそう訊けば、幼い笑顔でいた彼女の表情が。自信に満ち溢れた、凛々しく頼もしい笑顔になる。
「安心してください。もうすぐ。もうすぐ逢えます」
「もうすぐ?」
「えぇ」
次のユニの言葉に、僕の口角が上がる。
やっぱり一筋縄じゃあいかないよね。でも奪いがいがあるよ。
今度こそ、君に会える。ただただ会いたくてしかたなかった君に。今度こそ僕のものに。
君の大事なもの全てを捨てさせてでも、僕を選ぶように仕向けてあげる。
君の心を奪って、あの続きをしよう。
「代理戦争中に、逢えます!」
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そして本編『ヴェルデチームVSユニチーム』、
『たくさんの出逢いの後に災い』に続く。
つ、次のお話いく前に、先にそっち読んでもらえるとわかりやすいと思います。
見たことないかたは。たぶん次ちんぷんかんぷんに。説明はしょるので←
2013.12.13