「ぐわぁぁ!」
「うぐっ、」
喚き声が発せられる場所。それは私がたった今入った、この場所の中央から聞こえる。
ココは、ボンゴレの事務員の体を軽く動かすために使われるところから、
エリート戦闘員がさらに強くなるため修行する、トレーニングルームだ。
その大ボンゴレのエリートが集まる、この部屋で一番広いエリアは今…
たった一人の少年によって、潰されかけてる。
「つ、強ぇ」
「何者だあいつ」
「あれだよ、この前に次期ボスの十代目と来た…」
そのエリアの周りは見物者でいっぱいで、しかしそのエリア内に入ろうとは誰一人とせず。
入ればその途端、文字通り、奴の“餌食”になるからで、命惜しい者は絶対に入ったりはしない。
しかし元々そのエリアに居た者は致し方なく、変にプライドが高いエリート戦闘員は自ら入りこむ愚かなり。
奴は、ココの次期トップに入る方。いや、もう入ってるといってもいい。
そんな、雲の守護者に、お前らが敵うはずない。
「雲雀恭弥さま」
「・・・・・・・」
エリア内に、立っている人は二人しかいない。
たった今エリア内に入り“奴”の名前を呼んだ私と、雲雀恭弥。
そう、本当にたった今、エリア内に居た彼に敵意を持つ者は、すべて倒されてしまったようだ。
まだココに人が居るのに動きを止めたのは、私が貴方に対して敵意を持っていなかったからか。
しかし名前を呼んだだけで、彼は刺すように私を睨む。
この視線には相変わらず、戦闘慣れした私でも耐えられない。
彼こそ戦闘慣れしているはずだから、私がどうだろうと意味はないけれど。
早くこの視線から逃れたくて、会話しようと言葉を発する私。
「朝からとても活発なのですね。エリートが集まるトレーニングルームを潰すなんて」
「群れていたから咬み殺しただけだよ」
彼は、なんともないように言い返す。まるで、これがエリートだったの?とでもいうように。
本当に末恐ろしい。この倒れた人の中には、名のある者も少なくない。それをこうも簡単に。
それに服に返り血は浴びてはいるものの、彼が流した血はなさそうだった。所謂無傷。
そんな状態で、彼は不完全燃焼らしくまだ血を求める獣の目をしていた。
その目を、私に向けている。
「やろうよ」
「私には貴方とやりあう理由もありません。また、利益もない」
こんな強がりを言うけど、今にも震えそうなぐらい心は彼に怯えている。
そんな私の状態に気づいたのか、彼は興醒めしたようで
「用件は」
と言った。
(助かった・・)と心中で息をつき、落ち着かせる。
「朝食の準備ができました。どうぞダイニングへ」
そう言うと今度は彼がふぅと一息ついた後、エリアの出口へ向かう。
私が入ってきた場所の出入口は私の後ろにあるので、当然私に向かうように彼は歩いてきた。
それだけでまた強張ってしまう。平静を保つのに精一杯で、でもやっぱり彼にはバレバレで、
すれ違い様に、耳元で囁かれた。
「どうして君ほどの実力者がそんなに怯えてるのか知らないけど、近い内やろうね」
ガシャンとドアを閉めていった雲雀恭弥。
特別に強化ガラスで覆われたこのエリアの外を、視界の端で見た光景は彼が微笑みながら去っていく様。
さらにこの巨大なトレーニングルームから去ると、この場の者全員が脱力したようにうな垂れる。
その内にもちろん私も入っていて、後ろのドアガラスに寄りかかる。
「ふぅ・・・」
そりゃ怯えるって。あんたは実力だけじゃない。危ない匂いがする。これは強さとはまったく別物。
長年戦場に立ってきて、感覚でわかる『危ない奴』。そんな奴が強い力を持つのは、あまりにも危険すぎる。
そう思い耽ってると、真後ろから聞き慣れた声が。
「よっ」
「よっ、じゃないリボーン」
ガラス越しに聞こえた声はくぐもっていて、その小さな体で重いガラスのドアを開ける。
私は寄りかかっていた身体を起こして、自分のスーツを整える。
そうすればリボーンはにやっと嫌な笑いをし、痛いところをついてくる。
「雲雀には随分弱ぇーみたいだな」
「あんた、よくあんなの連れてこれたわね。何したの」
訊いても、リボーンはフッと笑い「ひみつだぞ」と可愛らしい声で言う。
そんなリボーンに呆れながらため息をつく。この人たちと居ると疲れる・・・。
そしてこっちの用件も思い出し「リボーンも朝食できたわよ」というと「おう。ご苦労」と偉そうに言う。(ムカッ)
でももう怒る元気もなく、ココで怒ってもどうせ意味はないのだし、大人しくしてやる。
そして彼の銃をチラッとみた。
「あれ、銃変えた」
「フ・・・試し撃ちがしたくてな」
ズガンッ
「あぁ、あっぶねぇぇ!!何してんのアンタ!!!」
「避けんなよ、チッ」
な、何コイツ!同僚殺そうとしたよ!珍しくトレーニングルームきてると思ったらそれか!
「いや、本当は射的場行こうとしたけどな、が居たからな」
「テ、メー・・・っ」
人間の標的は私だけか・・!こいつ、いつか殺してやるからな!
とりあえず自分の額に浮き出てる青筋は隠そうとは思わないが、立場上コイツに下手なことは言えずに。
「相変わらず逃げるのは上手いらしいな」
「回避って言ってくんない、消すわよ・・?」チャキッ
「そんなお前に免じて、今日はこのぐらいにしてやる(ニッ)」
『お前の銃なんて怖かねぇ』とでもいうように、余裕に笑ってみせるリボーン。
そんな彼は自分の腹がぐぅーと鳴った途端に、踵を返してエリアを出る。
相変わらず自己中心的なところは変わってないようだ。と、呆れながら彼を見送る。
バタン、と出てったリボーンはまだ言い残したことがあったのか、強化ガラス越しに口パクでこう言った。
「また遊んでやるよ。」
「また遊んでやるよ」
最後にパチンッ☆とウィンクをして・・。
・・・・・・・。
うぉぉぉぉ!!!ムカツク!!あいつマジ殺す!!バカにしやがって!
悶えて床を殴りながら苛立ちをなんとか発散させようとする私。俺様ぶりはもっと変わらなかったな。
なんでこうもアルコバレーノは俺様が多いんだろうか。強気っつか、横暴っつか。
・・・でも、さっきの一瞬。私は“彼”を見た。
それは前に、『それ』であの言葉を言われたからだろう。デジャヴを感じたのだ。
アルコバレーノになる前の、彼。まだ小さくない姿。
ドンッ ドンッ ドンッ
『リボーン、あんたもう避けないでよ!・・・あっ、弾が…』カチッカチッ
『お前、オレと同じ訓練しかしてねぇのに銃はからっきしダメだな(ハァ)』
『煩い!あんたが化け物なだけだ!』ガチャッ←弾セット
『お、まだやるか?(ぐぅ〜)・・食いに行くぞ』
『Σあんたの腹優先かっ!!』
『フン、また遊んでやるよ。』
あぁ、思い出してもまだムカツク・・・。変わらない、ってか成長しない男だな。
・・・しかも身体は退化するって。普通ならありえん。神様が天罰を与えたんだきっと。
それにしても不思議なもん見た。疲れてんのかな・・。
そういえばあいつ、去り際にウィンクしてったな。あの容姿だから許されるからいいけど、本来の姿だったら…
・・・・・・ぞわっ
そ、想像なんてするんじゃなかった。悪夢だ、キモ過ぎる。災厄の前兆だ、絶対。
「アンタ、さっきから何してるの?」
「あ、ルッスーリア。とスクアーロ」
「独りで百面相かぁ"?」
トレーニングルームのエリートエリアで独り座る私に話しかけたのは、珍しい組み合わせの二人。
どうしてココに・・と思ったがそれはアッチのセリフらしく、むしろ考えれば彼らはエリート中のエリートだ。
ココに居ても、トレーニングに利用しようとしてるのは当然で、考えてみれば私はあまり訓練はしない実戦派である。
ようやく納得し、一拍置いてから彼らに話そうとするが、先に「コレはどうなってんだぁ」と言い始めたスクアーロ。
周りを見わたすスクアーロにつられて私も見回す。そうすれば目に入るのは倒れた人たち。
「あぁ、雲雀恭弥がやったんだよ」と簡潔に説明すれば、二人の顔はぞれぞれ別の意味でひどく歪む。
「あの子、そんなやっちゃったの?!モスカを圧倒しただけあるわね!(むふふ)」
「あのガキ・・」
・・・・もうルッスーリアに狙われた少年たちは可哀相だな。精神的ダメージだ。
そんなことは、まぁ今はいいとして。スクアーロは相手が居なくて、不機嫌になってしまった。
この短気な人たちの相手してたらキリがないことを知ってるので、さっさと次の仕事へ行ってしまおうか。
と、起き上がってこの場から去ろうとする私を見て、スクアーロは「お前、相手しろ」とやっぱ言ってきた。
それをいつもの調子で「ルッスーリアにしてもらえばぁー」と適当に言うと、いつものルッスーリアは
「スクアーロは私の趣味じゃないわよー」
と言うはずなんだけど、今日は・・・言わない。
気になってチラッとルッスーリアを見ると、なんか考えてる様子。
「ねぇ。さっき会ったときのいい話ってやつ、今聞いちゃダメなの?」
「さっきだぁ"?」
「別にいいけど、それなら少し場所変えたいわね」
二人しかわからない会話にスクアーロがつっこんで、ルッスーリアは「乙女の内緒話に入らないのっ」と指摘するが
「テメー、乙女の前に女ですらねぇだろうがぁぁ!!」と余計彼の怒りを煽らせてしまった。
でもルッスリーアはスクアーロを無視して、「じゃあ場所を変えましょ」と私の背中を押す。
話がアレなので、トレーニングルームからは出て、ココは暗殺部隊ヴァリアーの区域への渡り廊下。
ココならヴァリアーの隊員以外、あまり人は来ないから話せる。
「で、話ってなんだぁ"」
「その前に、なんであんたもついてきてるのよ」
まぁべつにスクアーロに聞かれてもいい話だから、いいんだけど。
「あのさ。今度XANXUSと話があったのよね、私。九代目とのパイプ役で」
「へぇー。お仕事の話?」
「(?)アイツがどうかしたのかぁ?」
「めんどくさいけど、私の仕事ルッスーリアやる?ボスと二人っきりよ」
「やるわ」
「承諾早ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!!」
スクアーロがつっこむと煩いんだよね。耳の鼓膜破れる。
そう思ってスクアーロを睨むと「お前、それでいいのか・・?」と仕事面に関することだと思うことを訊いてきた。
いいよ。九代目から私、私からルッスーリア、ルッスーリアからXANXUSになっただけだし。
それにXANXUS少し苦手だったのよね。まぁルッスーリアが上手く事を運んでくれるかどうかだけど。
と、少し離れたところで踊ってるルッスーリアを二人で見る。
・・・・・・・っ!
「ルッスーリア、危ない!」
「え?」
がしゃんっ
この暗い渡り廊下の奥から、なにかが飛んできてルッスーリアに命中した。音からして割れ物。
倒れたルッスーリアに近づいて見ると、それは花瓶。床が水浸しになり花が散らばってる。
ルッスーリアの容体を見ると・・・・奇跡的に少し出血した程度だった。(ありえん・・!)
でも打撃のダメージはあるようで、「はっ・・あん(ガクッ)」と気を失ってしまった。
(横でスクアーロが気持ち悪いと殴ってた)(けが人相手に・・)
朝であるはずなのに、この廊下は暗い。北西に位地してるからか、辺りは真っ暗。
そんな暗闇の奥から、もっと早く“殺気”に気づいてればルッスーリアを助けれたのに。
その殺気はどんどん近づいてきて、顔を出した。
「テメーら、何話してやがる」
「・・・XANXUS」
「カスが」
あちゃー・・。話し聞かれてたか。よりによって本人に。ルッスーリアごめんね。
XANXUSはすぐそこまで来てて偶然話しを聞いて、近くにあった花瓶を投げたんだろう。手が少し濡れてる。
そんなXANXUSをゆっくり観察してる暇はなくて、思ってる間にスクアーロは始末される。
・・って、なんで?!スクアーロなんもしてないじゃん!でもそれもいつものことか。
「おい、。テメー次こんなことしてみろ。消すぞ」
「・・・・・はーい」
やっぱ苦手だ。ホントアルコバレーノに負けないくらいの俺様っぷりで。
そう適当に返して、XANXUSは許してくれたのかそのまま私たちを通り過ぎた。
ウィスキー1ダース、と言葉を残して。・・・・・えー。
まぁいっか。ケガはしたくない。金で酒で済ませるんならお安いもんだ。
・・・・・・・・・ってかすっかり仕事忘れてた・・!!!
いいいいま何時ぃぃ?!ギャーもうこんな時間!さっさと探さねば!
そう思って、倒れてたルッスーリアとスクアーロの顔面にハンカチかけて、弔っといた。
カッカッカッ、と急いで心辺りのある場所を探す。
けれども居ない。どこかへ行ったのか・・・弱った。
こうなったら、もう匂いで追うか。そう思って匂いレーダーで捜索するため彼女の部屋へ行く。
ギィッとまた軋むドア。ココは守護者の部屋。それなりにいい造りではあるが、今度また直させよう。
(さっき見たけど・・・戻ってはこないか)
部屋には誰もいなく、真っ白い空間だった。必要最低限の家具しかない殺風景な部屋。
その部屋にこの前追加された、上質な椅子3つとテーブルのセットは使ってないようで変わらず綺麗だった。
こんなんじゃ匂いなんて・・・。ベッドくらいにはあるかな。
ベッドへセンサーを向ける。少しでも反応すれば回収できる分だけあり、回収する。
そうすれば、ピピピピピッとセンサーから音が鳴り、回収するためにベッドへ乗る。
四つん這いで歩いて、なるべく匂いの強いところから回収したい。じゃなきゃ捜索が広範囲にできない。
またピピピピピーッと鳴り、強い反応があって助かったと思った。
そして探そうと『捜索』のボタンを押すとピピピピピピピピーーッと壊れたように音を出す。
(!?な、何が起きた?壊れた?)
「・・・・・・?」
「!!!!??(ドッキーーーン)」
心臓が飛び跳ねそうなくらいに驚いて、慌てて後ろへ振り返る。
そこには私が探してたクローム髑髏が居て、じっと私を見てる。
「どうして私の部屋・・」
「あ、い、いや!別に変なことしてたわけじゃないから!誤解しないで!」
や、人のベッドで匂いを探してる人なんて十分変人だけど。変な意味ではない!断じて!
そう必死に弁解しようとするが、クローム髑髏は何も思ってないのか無表情だ。
やっと「どうしたの?」と喋ってくれたおかげで、一先ず変な誤解はされてないようだと思い、仕事をする。
「大変遅れて申し訳ありません。ご朝食の準備ができました」
「・・態々そのために?」
「はい」
そう言うとクローム髑髏は「・・ありがとう」と微かに頬を染めながら言った。
・・本来なら、クローム髑髏に私は可愛いとか思ってるだろうけど、今だけは違う。
「・・・バレてますか?」
「えぇ、霧の守護者。六道骸さま」
“彼”の名前を言えば、クフフフフと笑うクローム髑髏。部屋の空気が変わった。
彼は、復讐者の牢獄に居ると聞いた。だからクローム髑髏の身体を媒介、もしくは借りて『外』に出たりもするらしい。
今は後者のようで彼女の姿をしつつも、大きな可愛らしい目には光はなく、普段無表情の顔には妖艶な微笑みを浮かべている。
「僕にも敬語を使うのですか?」
「あなたが本来の霧の守護者ですので。それに敬語はあなたも一緒です」
「僕は素ですよ。あなたは素ではないでしょう?」
さっきクロームへ弁解してるとき、戻ってましたよ。
うっ・・・焦って素が出てしまったか。それは認めよう。ってかそんなことどうでもいい。
どこへ行ってたのか、そして何故“六道骸”がココへ居るのか。それを聞きたい。(大体想像つくけど)
「ちょっとボンゴレの偵察ですよ。どんなもんかとね。クフフ」
「(やっぱり)・・・便利ですねぇ、その能力」
彼がクローム髑髏でこの屋敷に居る限り、彼は捕まらないし並の者じゃ区別もつかない。
止める術はないので、返事もみつからなく適当に言った。
でも私も仕事があるのでいつまでも付き合ってられない。骸でもクロームでもなんでも、さっさと朝食を摂るよう言う。
「早くクローム髑髏に返してあげてくださいね」
そう言ってこの部屋から出ようとすると、ガシッと掴まれる腕。
ん?と思って見れば、掴んだのはもちろんクロームもとい骸で、私に向かって笑っていた。
それに何かと、そして少し嫌な予感がして後ずさる。しかし腕は掴まれたまま。
「あ、の・・・」
「なんですか?(ニコニコ)」
後ずさる私についてきて、骸は進む。
そしてもちろん、漫画みたいな小説みたいなありきたりパターンで後ろにはさっきのベッドがあって…
っ!
ガッ
「な、んでココで踏みとどまるんですか」
「これ以上行ったら、身動き取れなくなるからです・・!!」
ギリギリ、いやもう片足はベッドの上に乗っかってしまってるが、脚力腹筋腕力で踏ん張って倒れないよう耐えた。
おぉぉぉ・・!クロームの身体なのに力強い。そんなもんなのか?!私が負けるなんて・・!
起きようと、倒そうと押し合いの中、不意に骸が私の首を舐めた。
「(びくっ)」
「クフフフフ、感じてるんですか。そのまま全身の力奪ってあげます」
「本当にクロームへ身体を返してあげてください・・・っっ!!」
彼女のせっかくの可愛い顔が台無しだよこれじゃ!
あぁぁ、ってか腹筋使いながら喋ったせいで、腹筋超痛ぇぇ・・!なんでこんな強いの?!可笑しいだろ!
そう思ってる間にもまたクロームの顔は近づいてきて、今度は避けた。
む、骸ぉぉぉ!!コイツ、復讐者(の牢獄へ行っていますぐ殺してやる!
そう殺気立てて、避けた瞬間骸がふらついた隙を狙って、自分の懐から銃を取り出し彼女へ向ける。
ドンッと撃ったが、骸が紙一重で避けた。これももちろん計算の内。骸にとってクローム髑髏は大事な媒介。
鉛弾なんて入っちゃ都合が悪いだろうから、わざと避けさせたのだ。
そしてもちろんこの隙を狙って、骸の手から逃れられた。ダッと真っ先にドアへ向かって、最後に一言。
「クローム髑髏に身体返してあげてくださいねーー!!!」ダダダダダッ
「クフフ、行ってしまいましたか」
*
あ、あっぶね。あいつも危険なやつだ。雲雀恭弥とは別の意味で・・。
さて、これで全員回ったな。バタバタと小さな仕事や報告も終わったし、ダイニング行くかな。
今度もかなりのタイムロスをしたので、早足で向かう。
カッカッカッ
もう音が鳴るのは、しょうがないことにして気にしない。人なら全員起きただろうしね。
ダイニングのドアの前まで行き、ノックをして門番に開けさせる。
「あ、!」
「食ってまーす!」
私が入ると同時に手を振って合図してくれた、十代目と山本武さま。
それに嬉しくなって彼らの近くへ行き、食事のほうはどうか訊く。
「おいしいよ」「このパン、旨いッス」「お前は食べねぇのか?」
そこで獄寺隼人さまが、私に気遣ってくれてさらに嬉しくなってしまった。
「私はもう食べたので結構ですよ」とやんわり断る。
「そう言わずに食え!!」
「、おれっちの隣りこいーー!ぶどう欲しいんだもんね〜!」
了平さんやランボさんに呼ばれたが、まだ仕事があるので惜しくも断った。
しかしみんな優しいなぁ。それに加えて実力者。うん、ボンゴレの未来は明るい。
「・・・・」
考えながらもう行こうかと思っていたところ、クローム髑髏に話かけられた。
「骸様から聞いた。ありがとう・・」
「い、いえ。当然のことですから(きゅんっ)」
うん、可愛くみえた。ちゃんと彼女だ。よかった。
そう安心して、彼女に二へ二へ笑ってるところ
「様」
と十代目たちのボディーガードである者から「次の仕事は…」と話掛けられる。
あぁ、もうそんな時間か。もう少しゆっくりしてたかったな。
そう本当に名残惜しく、十代目たちに向かって
「ではみなさま、ゆっくりなさってください」
と一礼してから、その場を後にする。
さて、次は…
と、その前にクローム髑髏の部屋のドア修理の件もやっとかなきゃな。
今日も忙しいなぁ、まぁ楽しいからいいんだけど。
|