、学校の時間大丈夫ッスか?もう8時ッスけど」

「いただきます」

「いただきますじゃなくて」

「んんんんん、んんんんん(もぐもぐ)」

「何言ってんのか全然わかんないッス」



ごっくんと
アッシュが作ってくれた美味しいゴハンを飲み込んで、言う。
「だって食べながら喋っちゃいけないでしょ?」
だから喉から言ってあげたのに。ハミングで。
そうッスけど・・・、とアッシュが言ってる間にまた食べる。

「ちょっと、!?答えてくれる気ないんスか?!」
「んんんん、んんんんんん」
「もう、ちゃんと言ってくださいよ!!」
「(ごっくん)『まてまて、まだ食べてる』だよ」
「そっちはいいから、俺の最初に質問に答えてくださいッス」

まったくしつこいなぁ。心配してくれるそんなアッシュが大好きだけど。
でもさ・・・いくら遅刻しようが熱でようが、この美味しい朝ゴハンはゆっくり食べてたいじゃない?
そう輝かしく言うと「そうゆう問題じゃないんスよ・・・」と少々疲れ気味なアッシュ。
そんなアッシュにポンッと手を乗せてから、食事に集中しようとする。

でもとつぜん聞こえた「アッスくん、まだ朝だよ〜?疲れんの早いって」の声に視線は再びアッシュの方へ。
しかし、そこから聞こえたはずの声はすでに移動したようで、私の首元に現れる青い腕。



「おっはよー!」

「スマ、あたし今食事中だよ」

「アレ?なんかもテンション低いねー」



うん、低いよ。今日はなんか嫌なこと起きる気がする。っていうか起きる。
今日はDTOの授業で当たるなぁ・・・。サボったら一発でバレるし、あと怖いし。
でもDTOの授業は好き。楽しいし、当たりさえしなかったら絶対サボんない。

ボーっとこの先のことを考えながら食べると、せっかくのゴハンがまずくなっちゃう気がしたから止めた。
スマは特にあたしを気にするでもなく、すぐに自分の椅子に座って食べはじめる。
「アッスくん!!今日カレー味のガーリックトースト出してって言ったじゃん!!」
「だからなんスかそれ!」
「昨日テレビでやってたのー!超おいしそうだった!!」
あぁ・・・。そういえば今日、珍しくスマが起こしにきたっけ。(それ言うために早起きしたんだろうか)
たしかに美味しそうだなーとぼそっと呟けば、アッシュは「・・作れなくはないッスけど」と言った。
そのあとうーんと唸りながら考えた結果、「じゃあ今日の昼に出します」と言った。きっとレシピに悩んでたんだ。
私はわーいと喜ぶものも、スマは、作ってもらえるようにはなったものの
今食べられないのが不満なようで、惜しくもこの場に出されなかった品の名前を呪文のように連呼する。

「ギャンZトースト〜〜」
「ギャンZ関係かよ」
「違うよ、今ボクが名づけたの」
「やめてよ、美味しさ半減する」
「えぇぇ!?倍増でしょ?!」

「む、。まだいたのか?」

今日も遅れて登場の我らが城の女王さま、ユーリ。
いつものあたしはもう城を出てる時間だから、たいてい玄関もしくはユーリの部屋近くで挨拶することが多い。
だから、今日はこの場であったことに違和感を感じたみたい。少し眉間にシワがよった。
美人さんがそんな顔しちゃダメだよ〜、とあたしではなくスマが言うと、その眉間はさらにシワをよせた。
「、ユーリが怖い〜。睨んでくる〜」
「頑張って」
「何を?ねぇ何を?」
「黙れ」
バシッとスマの頭を軽く叩くユーリ。今日も血が足りない彼は低血圧で、朝が辛い様。
そんな彼は食事に一通り目をとおし、またあたしに質問する。



「学校はいいのか?」

「いただいてます」

「そうか」

「ユーリ、そんなだからは…」



朝からガミガミ怒るアッシュが癇に障ったのか、そこらへんの物を手に取ってアッシュに投げるユーリ。
それは見事アッシュに命中してアッシュを黙らせたのだが、その投げたものに問題。
「ユーリィィィィ!!それボクの限定版ギャンZフィギュア!!」
「知るか」
「うわぁぁぁん!!ギャンブラーぜっとぉぉぉぉ!!」
それはそれはもう、悲痛な声で叫ぶスマ。投げられたギャンZの元へ向かい抱き上げる。
あぁもうそんな大声出したら、余計ユーリ怒るじゃん。
そう思ってユーリを見・・・・・あ、あれ?ユーリ?



「どうしたの?顔色悪い…」

「・・う、(ふらり)」バタン

「!?ゆ、ユーリ!?」



急に倒れたユーリ。どどどど、どうした!?そんなにスマの叫び声が悲痛だったか!?
すぐに駆け寄るもどうしたらいいかわからない。
「あ、アッシュ!って気絶してるな!スマ!」
「フンだ!こんなことしたからギャンZの祟りが起きたんだ!」
「ごめん、それシャレにならない」
普段スマ虐めにユーリが使ってる方法はだいたいギャンZで何かする。(壊したり壊したり壊したり)
祟りが起こったって不思議じゃないんだ。そんなこと言ってる場合じゃない!
ふと、ユーリが何か言ってることに気づいた。
聞き取れるように、耳をユーリの口へ近づける。



「ユーリ、何?どうしたらいいの!」

「・・・す、まない」

「謝ってる場合じゃ…」


ガプッ



!!!?
とつぜんきた首筋への痛み。それと同時に力が抜けていく。
ユーリはムクりと起き上がり、今度はこっちが倒れたあたしの身体を支えてくれた。
こ・・・これは・・・。

「ユーリ・・!勝手に飲んだで・・しょ!」
「すまないと言っただろう」
ありがたくもらったぞ、の血。

この吸血鬼という名の女王様め・・!!!
これからあたし学校なんですけど!?血返せ!
そう心で言うも、貧血で頭がくらくらしてまともに喋れない。意識さえ朦朧とする。
上で、「うむ・・たしかに少し飲みすぎたか」という声が聞こえただけ。
もうダメだ・・って気絶する寸前、ガプッとまたきた痛み。それと同時に今度は楽になる。



ぺろっ

「ん・・・ふぅ」

「どうだ?」

「どうだじゃないよ、ユーリのバカ・・!」



送り込まれるときに溢れた血を最後に舐められ、あたしは完全に意識を取り戻した。
でもやっぱりまだちょっと貧血。そりゃ少ししか返してもらってないからだけど。
当のユーリは近くにあった棚からビンを取り出し、飲んでる。(中身は何かの血)
ったく、はじめっからそっちを飲めばいいものを。言われたら持ってくるのに。
そう言ったらユーリは勝ち誇った顔で「久しく飲んでいなかったからな、のが飲みたかったのだ」と言った。

「っていうか年頃の乙女に、こうゆうことすんのはどうなの?」
「年頃だからこそだ。はまた美しくなったな。血が美味い」
「そりゃ天下のDeuilに育てられてるんだから、あたしも美しくなって当然でしょ?」
「あぁ、当然だ」
「否定してよ、なんかあたしイタい人じゃん」

ボケかますも、ボケボケユーリさんには通用しなかったらしい。
とりあえず身体の調子がだいぶよくなったので、すっかり忘れてた食事を再開する。

あぁ・・おいしいなぁ。貧血のせいかゴハンが美味しく感じる。エネルギーを欲してるんだ。
そう理性のままにパクパク食べてるとブブブブブって鳴る携帯に学校から電話。



「もしもし」

『?俺だけど、どうした?今日のこと覚えてるか?』

「(ハジメちゃんか、ならふざけていいや)今、食事中です」

『はぁ!?おま、寝坊なら寝坊って言えよ。そして連絡しろ』

「学校行くんですからべつにいいじゃないですか。っていうか今日…」

『忘れてたのか?今日、中学と合同授業だろ?』



あちゃ、失敗した。すっかり忘れてた。だから中学担当のハジメちゃんが掛けてきたんだ。
・・・・・・っていうか、え?あたし合同授業サボった?
「は、ハジメちゃん。つかぬ事をお聞きしますが」
『な、なんだ?』
「ハヤト、グレてない?」
『めちゃくちゃグレてる』
し ま っ た 。
あたしはなんてことしてしまったんだ・・・。
中学との合同授業。それには二人一組で勉強するため、1年間一緒のペアができる。よく小学校でやったような。
高校生はもちろん中学生と組むもので、なんの因縁か、あたしのパートナーはハヤトとなった。
つまり今日の合同授業。あたしが居ない=ハヤト一人だ・・!!
あぁ・・可哀そうなことしてしまったかも・・。っていうか後が怖い・・!!
あのこ黒だか白だかわかんないんだよね。最初は白だったのに、会うたびにだんだん黒要素見せてくんだもん。
と、一気に学校へ行く気が失せちゃって「ハジメちゃん・・ごふ、あたしもう死ぬかも」と仮病使っても
『ちゃんと学校こいな?』と見捨てられた。ひどい・・・。

ツーツーともう切れちゃった携帯の画面を見てて虚しさがでる。
携帯を折りたたんで、次の授業には間に合うように「ごちそうさま」とゴハンはそこで終わらせる。
どうせ同じ授業だけど、合同は二時間授業だけど。ハヤトこれ以上一人にしたら何起こるかわからない。

そんなわけで小走りで、いまだ床に倒れてるアッシュのもとまで行き
「アッシュ、ありがとう。おいしかったよ」
と少しでも夢の中へ届くよう、耳元で囁くように言う。
それを面白くないように見るスマは、「ボクはー?ボクにも言ってー」と言って抱きついてきたが
「スマはトラブルしか持ってきてないよね」耳元で囁いて言った。
うわぁんヒドイ!と泣くフリするスマを無視して、「仕事がんばってね」とユーリに言う。
「あぁ、今日は早く帰る」とユーリは血のように赤い紅茶を飲みながら言った。(むしろ血かも)

玄関のほうへいくドアを開け、最後にみんなへ振り返って出発。



「いってきます!」





いってらっしゃい (・・・///)(いい加減、起きなよアッスくん)(いや、一生寝てろ) (ちょ、いくらなんでも一生はひど…)(アッスくんだけオイシイ思いしてんだもん、ズルイよ)(そうだ、お前如きが) (ヒドイッス・・・) 2008.09.10